■■■■ Regret...
4-5
ひとしきり笑った後、ユゥイは表情を緩めたまま言った。
「そっか。ロックとは付き合ってなかったんだ…」
「ええ…」
「じゃあ…」
言葉の途中で、ユゥイが私に向き直った。
先程まで可笑しそうに笑っていた顔が突然真剣味を帯び、こちらをじっと見つめた。
黒曜石の瞳に見つめられ、それを見つめ返しながら私の鼓動は何故だか急に高鳴り始める。
「じゃあさ、セリスさん…」
「…?」
「私が…」
バン!!
「「!!?」」
突然響いた金属音に、飛び上がる程驚いた。
ユゥイも同じだったらしく、二人同時に音のした方へと視線を移す。
するとそこには、扉を開け放った状態で佇むロックがいた。
ドクンッ
突然鼓動が大きく胸を打ち、私は無意識に表情を曇らせた。
「ユゥイ!お前…こんなとこで何やってんだ」
言いながらこちらに近づいてくるロック。
声を荒げてはいないが、その表情は明らかに怒気を含んでいた。
ユゥイの正面まで来たロックは、ユゥイを鋭い目で見つめて問う。
「お前セリスに何言おうとしてたんだよ?」
「別に。何にも…」
素知らぬ顔してはぐらかすユゥイ。
そして「…いいとこだったのに」と口を尖らせた。
(ロックは何を怒っているの…?それに『いいとこ』って…?)
私は二人の態度と言動の意味が解らず、ただ戸惑って二人を見ていた。
「いいからお前とっとと部屋に帰れ。わかったな」
「……」
「わかったな?」
「…わかった…」
ロックに言われたユゥイは渋々この場を後にし、何かを言いたげにちらりとこちらを向いた後、扉を開いて去って行った。
それを呆然と見送り、バタンと扉が閉まった後でハタと気付く。
―――ロックと二人きり!?
ドクン、と再び鼓動が胸を打つ。
心の準備もしていない今、このまま彼とここに居ても気まずくなるだけだ。
第一、どうしていいのか判らない。
あまりに唐突過ぎて、何を話せばいいのかも、どういう態度で接すればいいのかもまるでわからなかった。
滾りそうになる頭をフル回転させながら、必死に自分が置かれている現状を見つめ直し、そして、
「じゃあ私も…」
もう、一刻も早く彼の前を去りたいという結論に達し、彼に背を向けその場を立ち去ろうとした。
が。
「ちょっと待てよ」
右腕を引かれた。
「――――っ!?」
驚いて、上げそうになる悲鳴を飲み込んだ。
触れられた部分から、急速に熱が身体を駆け巡る。
今が暗い夜で良かったと思う。
こんな赤面した顔を彼に見られたくなかった。
「会ってから全然話してないし…ちょっと話さないか」
本当は彼の前から去りたい気持ちでいっぱいだったが、イヤとは言えず、仕方なく頷いて応じた。