■■■■ Regret...
4-4
「…セリスさん」
「は、はい?」
再び名を呼ばれ、焦ったように不自然な返事をした。
彼女の隣にいるのはなんだか居心地が悪い。
何故か、心を見透かされてしまうような気になってしまう。
そんな事はありえる筈もないのに。
けれど、夜空に浮かぶ月の輝きに似た彼女の隣にいると、何もかもが暴かれてしまいそうな、そんな気がして…息が詰まる。
そんな胸の内を悟られないように、ユゥイを見遣った。
彼女は、月を見上げながら静かに私に問う。
「ロックと付き合ってたんですか?」
「!!?」
口調は穏やかなのに、その内容はあまりに直球すぎて、私の鼓動は驚きで一瞬動きを停めてしまった。
全ての動作が硬直して数秒経った後、声も出せずにひたすら両手を振り頭を振り、そしてやっとの思いで否定の言葉を口にする。
「違っ…!私ロックとは別にっ!付き合ってなんてないです!!」
私の否定の仕方があまりに不自然だったからか、それともあまりに必死だったからか、ユゥイは私のそんな行動を見て一瞬笑いを堪え、だが堪え切れずに噴き出した。
「そんな力いっぱい否定しなくても…!」
余程滑稽だったのだろう。
ユゥイはとうとう声を上げて笑い出した。
静かな闇夜に不似合いな笑い声が辺りに響き渡る。
私は急に恥ずかしくなって黙って俯いた。
(さっきまで彼女の不安を煽ってやろうかなんて考えていたくせに…このうろたえぶりはなんなのよ…)
自分の心を読まれたかのような問いをされ、戸惑いを隠せないでいた。
ロックの名を口にされれば尚更。
彼の名前を聞くだけで、冷静ではいられなくなる。
たったそれだけの事なのに、心を乱される。
今もどうしようもない程動揺している。
結局心でどう思っていても、何ひとつ言葉には出せやしない。
苛立つ気持ちや嫉妬の心は、胸の内で燻るばかりで。
そんな自分が滑稽すぎて…笑われても仕方ないと思ってしまう。