Regret...

4-2



 素足でこちらへゆっくり歩いてくるユゥイ。
 それを私は呆然と見ていた。



 …本当に、綺麗な人…



 凛とした表情。
 それを纏う雰囲気。

 ロックの外見が歳より幼く見える為か、ユゥイは幾分大人びて見えた。
 銀の髪をふわりと靡かせ悠々と歩いてくるユゥイは、降り注ぐ月華を受け、まるで月の女神のようだ。



 敵わない、と思う。
 どうしたって敵わないのだと、その様を見て知らしめられてしまう。
 そう思った途端、視界が滲みそうになり、私はそれを慌てて堪えた。



 比べる事すら間違ってるというのに。



 ユゥイはロックの隣にいることを許された人。
 今さら比べて敵わないと思った所でどうなるというのか。
 それでも惨めに感じる自分の心をぐっと抑え込み、私は出来得る限りの笑顔を作り、ユゥイに問いかけた。



「…月を見てたんですか?」



 私の隣まで歩み寄ったユゥイは、そのまま手摺りにもたれ掛かり



「ええ。今日は綺麗な月が出ているでしょう?こんな日に部屋から月を見上げるだけなんて
勿体ないしね」



 そう言って月を見上げた。



「…本当に綺麗な月…。取り込まれそう…」



 自然な笑みを湛え、うっとりと月に魅了されるユゥイ。
 不自然な笑みを作り、その月を禍々しいと思う私。



 非対照的過ぎて寧ろ笑えてくる。



 私の心は歪んでいる。
 月が綺麗だと喜ぶその姿でさえ、疎ましく思ってしまう。
 そんな歪曲した心を持つ自分が物凄く嫌で、それでもそう思わずにはいられない自分を更に嫌になる。

 心を覆う黒いものが、また少しその重さを増し始めた…。




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