■■■■ Regret...
4-2
素足でこちらへゆっくり歩いてくるユゥイ。
それを私は呆然と見ていた。
…本当に、綺麗な人…
凛とした表情。
それを纏う雰囲気。
ロックの外見が歳より幼く見える為か、ユゥイは幾分大人びて見えた。
銀の髪をふわりと靡かせ悠々と歩いてくるユゥイは、降り注ぐ月華を受け、まるで月の女神のようだ。
敵わない、と思う。
どうしたって敵わないのだと、その様を見て知らしめられてしまう。
そう思った途端、視界が滲みそうになり、私はそれを慌てて堪えた。
比べる事すら間違ってるというのに。
ユゥイはロックの隣にいることを許された人。
今さら比べて敵わないと思った所でどうなるというのか。
それでも惨めに感じる自分の心をぐっと抑え込み、私は出来得る限りの笑顔を作り、ユゥイに問いかけた。
「…月を見てたんですか?」
私の隣まで歩み寄ったユゥイは、そのまま手摺りにもたれ掛かり
「ええ。今日は綺麗な月が出ているでしょう?こんな日に部屋から月を見上げるだけなんて
勿体ないしね」
そう言って月を見上げた。
「…本当に綺麗な月…。取り込まれそう…」
自然な笑みを湛え、うっとりと月に魅了されるユゥイ。
不自然な笑みを作り、その月を禍々しいと思う私。
非対照的過ぎて寧ろ笑えてくる。
私の心は歪んでいる。
月が綺麗だと喜ぶその姿でさえ、疎ましく思ってしまう。
そんな歪曲した心を持つ自分が物凄く嫌で、それでもそう思わずにはいられない自分を更に嫌になる。
心を覆う黒いものが、また少しその重さを増し始めた…。