Regret...

4-1



【4】



 砂漠の夜は、昼間とは違いぐっと気温が下がり冷える。
 それを知りながら私は城の屋上へ向かった。

 あんなに眠りたいと思っていたのに一向に眠れる気配はなかった。
 辺りを覆う闇が濃くなればなる程、何故か目が冴えてゆく。
 その理由は自分でも何となく判っていた。
 考えたくないと思っていても否応なしに考えてしまう。




 …ロックと、ユゥイの事を。




 思い出さないようにしているのに甦ってくる昼間の会話。
 それは私の中で何度も何度も繰り返され、その度に私の心を掻き乱す。



 …二人は今この瞬間にも、同じ部屋で同じ時間を過ごしているのかもしれない。


 …私の存在なんて忘れ去って、互いの温もりを確かめ合っているのかもしれない。


 …私の部屋の隣で…あの二人は…




 ただの勝手な妄想に過ぎないとわかっている。
 わかっているが、昼間の会話が耳に残り、そういう類の事を考えずにはいられない。



 彼等は恋人同士なのだ。
 そういう事をするのは必定で。
 自分は干渉することすらおかしなことだ。



 頭では理解しているのに、心に重くのしかかる黒い闇は一向に晴れる事はなく、いつまでも私を追い込む。






 永遠に続くのではないかと思える程の長い螺旋階段を上り切り、耳を突くいやな金属音と共に、屋上へと通じる重い扉を引いた。
 途端に吹き込む乾いた冷たい空気。
 私は一瞬身震いしたが、構わず足を踏み出した。




 眼前に広がる、墨を掃いたような漆黒の闇夜と、浮かぶ十六夜月。
 鮮やかに輝くその月が何故か禍々しいものに見えてしまうのは、私の心の闇を暴いてしまいそうなその輝きを畏れているからだろうか。





 その時。



「…セリス…さん?」



 背後で名を呼ばれ、まさか人がいるなど思いもしなかった私は驚いて振り返った。
 そこには…



「…ユゥイさん…」



 私とは真逆の位置に立ち、微笑みながらユゥイがこちらを見ていた。




*prev next#
back

- ナノ -