■■■■ Regret...
3-4
* * *
フィガロの客間は広い。
それぞれの個室は、風呂・トイレ等、生活に必要なものは全て整っていた。
調度品も高級品ばかりで使い勝手も申し分なく、そこかしこに置かれた装飾品を見るとこの城の財源が豊かだということが窺い知れる。
部屋の奥の出窓を開ければ風通しもよく、そこから黄金の砂礫の山もよく見渡せた。
その出窓に腰掛け、砂塵を見つめていたロックに、ユゥイが問う。
「…あの娘に会ったから、とか?」
「え?」
「セリスっていう…ロックの昔の仲間。あの娘に会ってからロック、何か動揺してるように見えるから」
「俺が動揺…?まさか…」
ロックの表情に陰りが帯びた。
その様を見て、もう一言ユゥイは呟く。
「可愛い娘だよね、セリスさん」
ロックは怪訝な顔をしてユゥイと視線を合わせ、何かを言いたげに口を開いたが結局何も言わずやがて顔を背けた。
ユゥイは追い込むようにもう一言口にする。
「あの娘…バンダナ持ってたよ。藍色の」
その言葉に驚き、再び顔を上げた。
ユゥイは複雑な表情でロックを見据えている。
「拾ってあげたんだ。さっき風に乗って飛んできたバンダナを」
「…セリスが…?」
「ソレとよく似てた。というかソックリだった」
言いながらユゥイは同じ藍色を付けている彼のそれに指先を突きつける。
ロックは驚いた表情で差された指先を見つめた。
指差しながらじっと見つめるユゥイに、ロックは深く溜息をつき、首を横に振る。
「…俺には…関係ない事だ」
「本当にそう思ってるのかな」
「え…?」
「…なんでもない」
含みのある返事をするユゥイにロックは訝しんだが、それ以上は追求せずに目を伏せた。
ユゥイもそれ以上何も言わず黙り込んでしまった。
部屋に、暗澹たる空気がたちこめる。
しばらくの時が経った後、
「悪いけど…」
ロックがその沈黙を破った。
「一人にしてくれないか」
「…わかった」
怒っているような、愁いを帯びているような、そんな表情をしながらパタンと戸を閉め、ユゥイはロックの部屋を出て行った。
「…………」
ロックは黙って再び窓の外へ視線を落した。