■■■■ Regret...
3-3
広い通路に、渇いた足音が響く。
(さっきの…?)
彼の言葉が気にかかり、何の事なのか記憶を手繰った。
―――俺の妃になってくれてもいいんだけどね。
「!?」
ふと思い出した言葉に、思わず足を止めてハッとした。
「まさか…でも…本気?」
いや、けれど彼は口説きの常習だ。
イチイチ真に受けて慌てふためくのも馬鹿らしい。
…と思う。けれど。
(でも彼女には…ユゥイさんには口説かなかった…)
彼が、もう冗談で口説くのをやめたのだとしたら…、
そこまで考えて、ふと我に返ると自嘲した。
(だったら何だっていうの?)
彼が本気になったところで、別に私の気持ちがどうなるという事ではない。
今までと変わる事なく、私には想う人がいて、エドガーとは前と変わらない関係がこれからも続くのだ。
「きっと…何も変わらない…」
エドガーとも、マッシュとも、そして…ロックとの関係も。
今更変わる事などないのだ。
部屋は3人別々に与えられ、私の部屋はユゥイの隣だとマッシュに聞き、部屋へと向かった。
マッシュはその足でまた修行へ出てしまった。
(早くゆっくりしたい…)
今日は色々ありすぎて疲れた。
今はただ、何も考えず眠りたい…。
そんな事を考えながら部屋へと歩みを進め、ロックの部屋の前を通りすぎようとした時…
『…ロック…』
部屋の中から声が聞こえた。
凛とした独特の声色。
それは紛れも無くユゥイの声だった。
一瞬ドキッとして足を止めてしまったが、そんな自分を戒め、そのまま立ち去ろうと足を踏み出した。
…のだけれど。
『ロックってば』
『…何だよ』
否応なしに耳に伝わる二人の声。
立ち去りたくても足が動いてくれず、私の意思に関係なく会話は続いていく。
『…今日はしないの?』
『ああ…』
『どうして?いつもはロックから求めてくるくせに』
『―――今日は…そういう気分じゃないんだ』
『…そっか…なら仕方ないね』
(……………っ)
突然耳に飛び込んできた二人の会話。
その内容があまりに艶めいたものに聞こえ、一人あらぬ想像してしまい、顔が赤くなるのを感じた。
そして、立ち聞きなどしている自分がひどく惨めに感じて直ぐさまその場を離れ、自室へ向かって扉を閉めた。
けれど、その後の会話は私が知らない所でまだ続いていたようで…。