■■■■ Regret...
3-2
「セリス、君をここへ呼んだ理由は判っているかな?」
「ええ。あなたの公務を手伝う事でしょ?」
「違うよ」
「へ?」
そのつもりでここへやってきた私に一言で否定したエドガーに、私は思わず間の抜けた返事をした。
私は帝国で将軍職に就いていた事もあり、城の内政や公務等には割と精通している。
それを買われて、エドガーに手伝いを請われたのだと思って来たと言うのに。
それが違うと言うのなら何の為に私を呼んだというのだろう。
怪訝な表情を全面に出して彼を見つめていると、エドガーは口の端を上げてニヤリと笑う。
「君はこうでも言わないとフィガロに足を運んでくれないだろう?」
「なっ…!あなた、騙したの!?」
「騙した、という言い方は心外だな。まぁ結果的にはそう言われても仕方ないが」
私が驚く様を見てククッと笑い、「でもそうまでしてでも君に会いたったんだよ」と、相変わらずのフェミニスト振りを披露するエドガー。
「しかし…ロックまで一緒についてくるとは予想外だったな」
彼の、私がいかにもロックを連れて来たような言い方に、私は両手を振って力いっぱい否定した。
「べ、別に彼と示し合わせてきた訳じゃないわ。今日偶然ホントたまたまサウスフィガロで会って…」
「…本当にそうだろうか」
「え…?」
「…いや、こっちの話」
意味深な言葉に首を傾げたが、エドガーはそれ以上その事には触れなかった。
「ところでセリス、君に会えて嬉しいよ。何ならずっと此処にいて俺の妃になってくれてもいいんだけどね」
エドガーお得意の口説き目線と台詞をヒラリとかわし「遠慮させて戴くわ」と即答で丁重にお断りした。
「相変わらず手厳しいな君は」
彼の言う事は、どこまでが嘘でどこまでが本当の事なのか今だに理解し難い。
「とにかく君もゆっくりしていってくれ。俺も色々と忙しいが、君の為なら寝る間も惜しんで会いに行くよ」
「馬鹿ね。王様のくせに」
ふふっと微笑んで私は「じゃあ失礼するわ」と、玉座の間の扉へと向かった。
「…セリス」
ドアノブに手をかけた所で再び呼び止められ、そのまま顔だけ彼に向けた。
「なぁに?」
「…さっきの、本気だから」
「……?」
「いや、いいんだ」
「そう?」
彼の言う事に何だか釈然としないまま、私はエドガーの元を後にした。