■■■■ Regret...
2-5
…その時、
突然肩をトントンと叩かれた。
驚いて反射的に振り返る。
すると背後には、見慣れた巨漢が立っていた。
顔の前で手刀を切り、頭を下げて謝る姿は、どうにもその豪快な男には似合わない。
「セリス、スマン!随分待たせちまったな…ちょっと色々手間取っちまって…―――
ってあれ…ロック?ロックじゃないか!何でここに!?うわ…久しぶりだなぁ!」
顔を上げるまでロックの存在に気付かなかったマッシュは、ロックの姿を認めた途端驚きながらも満面の笑みで、彼の背をバシバシと叩いた。
「いてててッ!ちょ…マッシュ、痛いって!」
「ああスマン。ところでなんだってロックがこんな所にいるんだ?」
当然そう質問されるだろうと思っていた私は、不自然さを見せないように返事を口にした。
「偶然ね、会ったの。たった今ここで」
「そうそう、俺もびっくりしてさ」
ロックも話を合わせると、
「へ〜。ほんと、すごい偶然だな」
マッシュは本当に驚いたように交互に私とロックを見つめる。
その久々の再会を果たしている脇で、居心地悪そうにしていたユゥイがロックに再び「誰?この人…」と小声で問いかけた。
ロックは先程私にしたようにお互いを紹介する。
「セリスもマッシュも、前に一緒に旅してた仲間だ。マッシュの兄のエドガーは、フィガロ城の城主なんだぜ」
「フィガロの?」
「ああ。俺が王様と知り合いだなんてビックリだろ?」
驚くユゥイにロックは満足気に笑った。
私も子供のように自慢げに語るロックに思わず昔を思いだし、自然と笑みが零れる。
そんなロックにマッシュは尋ねた。
「ロック達はこれからどうするんだ?泊まる所とか決めてるのか?
もし暇があるんならフィガロに来いよ。セリスもこれから俺とフィガロに行く予定だったんだ。
ロックも来たら兄貴もきっと喜ぶぜ」
「セリスも…フィガロに?」
「ああ、兄貴が呼んだんだよ。セリスを」
「エドガーが…?」
それを聞いたロックの表情が一瞬固まった。
その後逡巡するように一点を見つめ、向き直りもせず隣の彼女に問いかける。
「ユゥイ…お前、フィガロ城行ってみたいよな…?」
「え?ああ…そりゃあもちろん…興味はあるかな?」
ユゥイの返事を聞いたロックは大きく頷いた後、マッシュに向き直った。
「…というわけで。ユゥイがフィガロに行ってみたいって言うから、俺もついでだし行く事にするよ」
何か妙に引っ掛かる言い方が気になる所だが、どうやらロックとユゥイもフィガロに来る気らしい。
まさかこういう展開になるとは思ってもいなかった私は激しく動揺した。
これから当分、この二人が並んでいる姿を見なければならない。
そう思うと、頭上の晴れ渡った空とは裏腹に、心は途端に厚い雲で覆われていくような、そんな重苦しさを感じ、憂鬱な気持ちでいっぱいだった。