一、幼なじみ
大きなボタンがつけられた男子学生服。
「……よし、」
少しばかり長い黒髪を撫でつけ、少年は薄く微笑んだ。

白いブラウス、どちらかと問われれば長めのスカート、綺麗な色をしたリボン。
「……変じゃないよな?」
肩まである水色の髪をヘアゴムで高く結い上げた少女は鏡を不安げに見つめた。

白いブラウス、短くも長くもないスカート、綺麗な色をしたリボン。
「よし!」
短い褐色の髪をオレンジ色のヘアバンドで纏めた少女は、満足げに鏡の前でくるりと身を翻した。



「円堂、学校行くぞ」
「円堂、早く……」
「ん、分かってる!」
市川 鷹太郎と風丸 一郎太、二人の幼なじみの急かす声に答え円堂 守は家を出た。
そよぐ風にのって、桜の花びらが舞い落ちる。
家の前の道路には薄紅色が敷き詰められていた。
桜の花びらを踏みながら歩けば、三人は同じ制服を着ている数人とすれ違う。
今日から、三人は私立雷門中学校の生徒となった。
「いい天気だなー!サッカー日和だ!」
「あはは、円堂はやっぱりサッカー部に入るのか?」
「当たり前だろ!」
拳を握り締め、守は瞳に燃え盛る炎を映す。
「暑苦しい!」
そう言って、一郎太は守の頭を軽く叩いた。
大袈裟に痛がる守を見て、鷹太郎が笑う。
鷹太郎が笑ったことに気づいた守が冗談っぽく怒り、また一郎太に頭を叩かれる。
それを見て、また鷹太郎が笑う。
何度も繰り返した、通学の風景。
今までも、これからも、同じであるという予感。
「っと……着いたな!」
「うわぁ……」
「……」
ひらひらと桜の花びらが舞い踊る。
正門の周りにも、薄紅色が敷き詰められていた。

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