03





「ただいま」

『あ、おかえりー』


友人たちと話を終えて帰ってきた兄さんは、その、何かすっきりっていうか、吹っ切れた顔をしてた。


『……何かあったの?』

「うん、そろそろ、武力行使に入ろうかと思って。」

『、マジでか。』

「そうだよ、海賊たちは何か危害を加えようってわけじゃなさそうだからさ、彼らが出港してからかな。」

『ふーん…、』


お湯を沸かしている俺は兄さんの方に顔を向けようとは思わない、だってきっと今辛そうな顔をしている。
…戦いたくない、んだろうな。
兄さんだって暴力を好むような人間ではないしなるべく話し合いで済ませたい人間だ、進んで武力行使に踏み入ったわけではなかろうよ。
つつかれたのかな。
とりあえず大剣"破壊者"は出番ないだろう、兄さんと稽古してきた弓矢でも相手は十分倒せる。
正直に言えば相手は、そう、雑魚だ。
弓矢は、前世では使ったことがなくて、でも兄さんがやりたいだなんて言うもんだから俺も成り行きでやってみた。
何気お揃いで色違いの弓、兄さんは白を基調とし赤の装飾が、俺は黒を基調とし銀の装飾がついている。
で、兄さん結構弓矢の才能あって的には百発百中という凄さを発揮していたんだが、多分人を射るとなるとかなり命中率は下がると思う。
ちなみに俺は大体百発八十中という何とも言えない数字だ、いや今更銃器に変えられねえし変えるつもりもないけど。
二人でカフェオレを静かに飲む、外では鈴虫が鳴く音、嗚呼もう秋かなんて思ったり。
やっぱり読書の秋だよなァ…、何か面白い本ないか今度探すか、とかボーッとして考え事をしていると、兄さんがじっと此方を見てきた、…………なんだかむず痒い。


『な、なんすか……。』

「ちょっと、何その口調おかしいよ?(笑)
――いや、あのさ、頼み事があるんだよねー。」

『ん?』

「武力行使するにも海軍から何か仕掛けてくるかもしれないじゃん?だから明日、偵察行ってきてもらっても大丈夫?」

『ん、そういうことなら任せて。』

「ありがとう。話はそれだけだよ、明日から準備しなきゃだから僕もう寝るね。」

『…………待って、』

「、どうしたの?」

『いや……なんか、兄さんが消えてしまいそうな気がして……何言ってんだろ、』

「…ふふ、僕は嘉識をおいていくことなんてしないよ。」


そう兄貴が微笑みながら言っても、何故かもやもやは胸中から消えなかった。
ふと時計を見るともう一時間で次の日になるところ。
もう寝よう、となってカフェオレごちそうさま、と言って席を立った兄さんにおやすみ、と声をかけて俺も寝るかと一伸びすると、頭を撫でられた、ふは、幸せ。

自室に戻る兄さんの服の裾にひどいシワが、兄さんの掌に爪痕があったことを気づいていれば、俺はこのことに関して一生後悔するに違いない。



リフレクション

(ごめんね、)(と涙を流しながら自室で謝る兄さんに、)(何も気づけなかった)




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