# 復活夢版深夜の真剣創作60分一本勝負 様より
お題「 恋の自覚 」

※この文章は「その手でちゃんと、受け止めて (前)」の後編となります。
まだお読みになられていない方は上記のタイトルをクリックして下さい。





「あ、危なかった ... 着地、考えてなかった...」
心臓は、未だにバクバクしてる。鳴りすぎてこのまま死ぬんじゃないかって思うぐらいには、凄く鳴っている。パキパキ、と背後の枯れ木の折れる音を後ろに聴きながら何とか上体を起こし。"スクアーロ、大丈夫?"と、目の前の彼へと声をかける。つい先程、丸腰で落下していく私を見たスクアーロは、私が理解できない程の早さで、私を落下から守ってくれた。多分、少しだけど見えた青い炎は、雨の炎。炎を出してまで守ってくれたんだと、思う。でも、辺りに散らばる破片はきっと、ホテル前に並んでいた植木鉢だろうか。あとは何本かの木も巻き添えを食らったらしく。きっと、そんなに余裕は無かった、という事を物語っている様で。ぜえ、はあ、と息を荒らげ、守る時咄嗟に抱き締めて私に腕を回したまま、何も言葉を発さない彼を不安に思って声をかけると。"はあぁ........."と、それはそれは、深いため息が彼から聞こえた。

「...如何しててめえは、後先考えずに行動すんだ」

「ご、ごめん... でも、寂しかったんだもん。」
"居なくなっちゃうなんて、狡いよ。だから1発ぶん殴ってやろうかと思って..." と続いた言葉に、相も変わらず物騒な事考えてやがるぜ と思いながら。彼はそれを黙って聞いていた。

「弱いのなんて知ってるし、足枷になんてなりたくない。だから遅くなるのは全然いいの、いつでも待てるの。でも、居なくなっちゃうのは、寂しい。」
ぽろ、ぽろ、とその目から溢れてきた涙に、青年は動揺すると。慣れない手つきで目の前の頭をぐしゃぐしゃと撫でれば、「ああ、泣くな泣くな。」と半ば強引に慰めの言葉を掛ければ。少しの沈黙の後、がしがしと頭をかけば。沈黙を切り裂いたのは彼だった。

「時間は長ぇぞ、待てんのか。」

「...うん、待てる。帰ってくるなら、待ってられる。」
ずび、と鼻を啜り。お世辞にも綺麗とは言い難い顔のまま、何度も頷けば。彼は「じゃあ待ってろお、」と言葉を返した。

本当は、自分の帰りを待ち続ける彼女を、その呪縛から解放させたかったのが。彼の本心だったのだが。
小さなその頭を見れば、何時になったら彼女はその辛さに気付くのかと。青年は少しだけ哀れに思った。

いつかきっと、壊れてしまうだろうから手放した。
だからこれは、此奴がその辛さに気付くまで。
気付いたその時には、今度こそ。俺はこいつの目の前から姿を__

「にしてもお前、んで飛び降りなんて命知らずなことしやがったんだ?」

帰ってきた此奴が目を輝かせて言ったのは、「ホテルのオーナーさん、凄く優しい人でね!!お金は要らないから掃除をしてくれたらいいよって言ってくれたの!」との事。優しい、ねえ。そこのオーナーは闇取引にも詳しい奴で、此処等では一流の情報通だ。あの感覚と言えば大方此奴と話していた時にも数台の小型カメラが設置されていた様な気もする。大方情報をくれてありがとう、との事だろう。任務ついでの"仕事"が増えたぜ なんて思った。

その時、ふと心に思いついた上記の疑問を口に出せば。目の前の彼女は不思議そうに此方を見上げ、可笑しそうに笑ったかと思えば。正面を向き、再度歩き出した。「だって、スクアーロは助けてくれるでしょ?」だなんて聞こえた声に、足を止めた彼がまた深いため息を付いたのは。また別のお話。





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