どきどきと騒ぐ心臓の音に、嗚呼、なんだ。夢だったのかと、目の先にある天井を只見ていた。 いつも通りの電球、慣れた視界にほっと息をつくも。胸の底の不安は取れないままで。 そっと視線を隣に送って、目に映る広い背中をずっと見ていたくて。体を返し、其方を向いた。 「……ンだよ、」 まさか起きているとは思わなくて。吃驚して目を見開いた。起きてたの?と聞くと、別に、と声が続く。
「…起きて、くれたの?」 ぽつりと呟いた言葉に、彼はそっと振り返った。大好きな顔がこっちを向いて、「起きなくても良かったんか」と、寝起きの低い声が告げる。 ううん、と首を振る。嬉しくて、そっち行ってもいい? と聞くと、爆豪くんはゆっくりと体を此方に向き直して、ぽす、とシーツを軽く叩いてくれた。 重力なんかよりも強い引力に引かれて、お邪魔します と心の中で呟きながら、その空間へ、ぽすんと飛び込む。
「…勢いすげぇな、テメェ」 「あ、ご、ごめんね… つい」 「別に、嫌だとは言ってねぇ」
うぐ、と心の中で歯を食いしばった。一体全体、どこまでかっこいいんだ、私の彼氏は。 それに、この距離。思ったよりも体温とか、匂いとかが全部伝わって。さっきとは違う意味で寝られなかった。くる、と彼に背を向けて。「は、テメェ何」と続けようとする彼の言葉を遮って、口を開く。 「手、繋いで欲しい」 はァ?と、頭の上から声が聞こえて。そんな反応をしながらも、渋々と手を繋いでくれる、優しい所が堪らなく好きで。へへ、と笑いながら握り返す。 汗かいてるかも、ごめんね と言うと。俺もだから気にすんなと声が聞こえた。
「爆発させないでね」 「させるかアホ」 「ふふ、あはは、爆発しちゃっても幸せだなあ」
" はよ寝ろや、眠ィんだよ " 顎でぐりぐりと頭を押されて、痛い痛い、とまた笑った。先に寝てもいいのに、私が寝るまで起きててくれるのは、彼の無意識の優しさなんだろうなと思うと、嬉しくて。繋いだ手を目に映して、ゆっくりと目を瞑った。
もう、大丈夫。きっといい夢を見れる。 夢でも、一緒がいいな。爆豪くんと手を繋いで、デートにでも行きたいな。そう思いながら、私は意識を手放した。
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