二楽章



太陽が頭の真上で輝くお昼頃。人々が一番活気づいている時間に、私は町に着いた。

町は七年前に来たときに比べ、道が整備されて歩きやすくなっていた。以前は、町に繋がる道は私が歩いてきた一本以外に無かったのに、今では東西南北の四本に増えている。道が増えたことによって人の行き来も活発になり、店もかなり充実しているようだ。祝祭を3日後に控えた町には露店が多く立ち並んでいたが、それらの多くは七年前よりも大きく、品揃えも豊富で、店自体の装飾も派手に思えた。とても賑やかだ。人々の暮らしぶりもだいぶ豊かになっている。

私は七年という時の流れの中で起きた変化に、人々の進歩への驚嘆と一抹の寂しさを感じた。

しかし、変わらないものもあった。お店が並ぶ賑やかな通りから道を一本ずれ、人々の住まいが集まる通りに出ると、そこには七年前の面影が多く残っていた。お昼時の太陽に照らされた黄色っぽい町並み、家の窓辺に飾られた色とりどりの野の花。どこか素朴な感じのする風景。そして、そこでは背中に羽を生やした子供たちが楽しげに駆け回っていた。

勿論、その羽は本当に背中から生えているわけではない。祝祭のために子供たちの親か、もしくは子供たち自身が作った飾りの羽だ。針金の枠に厚めの紙を張って作られた四枚羽は、蜜蜂の羽をかたどったものだ。実は蜜蜂こそが、この祝祭の主役なのだ。


なんでも、この町の守り神は金色の蜜蜂の姿をしており、遠い昔からこの町を見守り、豊穣をもたらしてきたそうだ。そして、その羽音はえも言われぬ美しい調べを奏で、人々を幸せにさせるという。春の祝祭は、蜜蜂の守り神に感謝をする祭りなのだ。

また祝祭では毎年、金細工の蜜蜂を胸元に着けた歌うたいが一人、町の人々の前で春の訪れの喜びの歌をうたうことになっている。歌うたいが歌うと、金細工の蜜蜂のブローチに守り神が宿り、歌うたいの歌声を羽音にのせ、町や、その回りの山々や花畑にまで伝える。そしてその調べが春を呼ぶ………。この祝祭にはそんな役割もあるのだ。

他に聞いた話だと、町の人々の前で歌った歌うたいは「春呼びの使い」と呼ばれ、大変名誉なこととして讃えられ、沢山の金貨をもらうんだとか…


私が春の祝祭を再び訪れようと思ったのは、吟遊詩人として優れた歌を聴きたいと思ったからだ。七年前に、あの子と聴いた春の歌。希望に溢れた喜びの歌をまた聴きたかった。


七年前に私の胸を打った時のような春の歌に、今年も会えるだろうか…。そういえば今年は誰が歌うのだろう…。


ふと、そんなことを思った時、私の目の端をキラキラ輝く何かが掠めていった。



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