目覚ましは日替りメニュー


窓の外から朝の気配が伝わってくる。夜だけど朝。太陽の昇らないこの島の、いつもの朝だ。でも私は起きない。あと一時間は寝る…

外から聞こえる鳥のさえずり。アナザー達の話し声や笑い声、爽やかな朝の風、かすかに焦げたにおい。それを温かいベッドの中で感じる幸せ…

………。……ん?焦げたにおい?

私は嫌な予感がして恐る恐る目を開いた。

『チリチリチリチリ……』

え、うそ、なんで。

「うわあああ!なんで!?なんで!?髪が…髪が…焦げてる…!」

「やっと起きたね…」

軽くパニックを起こしてベッドから飛び上がった私の傍らにいたのは、私の最愛のデビル、ウコバクちゃんだった。燃え盛る尻尾を、不機嫌そうに揺らしている。なるほど、犯人は君か。

「ウコバクちゃん…、いくら君でもやっていいことと悪いことがあるよ…。私の前髪チリチリだよ…」

「呼んでも、揺すっても、ひっぱたいても起きないアンタが悪いんだよ」

「そんなことしてたの!?」

私は寝起きがとても悪い。それは自分でもわかっていたけど、まさかここまで酷いとは。我ながらすごい。

「でも、シケたツラが少しはパンチの効いたツラになったと思うよ」

私の前髪を見てウコバクちゃんはおかしそうに笑う。絶対に楽しんでるよ、この子。でも、朝一番にウコバクちゃんの笑顔を見れたから良いかな。

そんなこと考えながら身支度を済ませる。時計を見ると、もう9時だった。やっぱり寝坊だよね。

あれ、そういえば…

「珍しいね、ウコバクちゃんが起こしに来るなんて」

ウコバクちゃんに限ったことではない。ナベ爺とグラシャ兄さんが、「シルファの自主性を伸ばすために寝起きは自分で」と言ったため、今日まで私はのんびりと寝坊させて頂いていた。

「あぁ、その事なんだけどね。とうとう他の奴らが『バトル待てない』、『暇すぎる』って言い始めてね、今日からデビル全員で日替わりでアンタを起こすことになったんだよ。で、初日はアタシ。初日は手加減してあげたからね?」

「いつの間にそんなことに!?あれで手加減してたの!?」

なんてことだ。もうゆっくりできないのか…。…あ、日替わりって言うことは、明日は誰なんだろう。

「ちなみに、明日は誰なの?」

「明日はモラクス姐さん」

私は自分の顔から血の気がサッと引くのを感じた。

いやいやいや、二日目難易度上がりすぎでしょ。今夜は守備力高めの装備を着たまま寝た方が良いだろうな…

沈む気持ちを抱えて(ちょっとモラクスに失礼だけど)、私は二階の自分の部屋から、一階のリビングへ向かったのだった。



翌朝、私がボロボロの姿で朝食をとったのは言うまでもありません。


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