ワケあり物件『白蓮荘


四月島の東、翡翠色の月の下、白蓮の木が囲む家。私、シルファ・マーレはそこにひとりで住んでます。春に、香り高い白い花を咲かせる白蓮。そんな白蓮の木が玄関の両脇に植わっている、なかなか素敵な家です。

島で暮らすこと半年、私はずっとこの家に住んでます。ウィッカ内の順位もそれほど良くないのに、なぜそんな家に住めるのか?実はこんなことがあったんです。


「レベル、アナザー順位、富めるも貧しきも関係なし。誰でも気軽に入居できます。 シェアハウス 白蓮荘」


そう、そもそもこの「白蓮荘」はシェアハウスでした。「島に来て間もない実績のないアナザーは、沢山の他のアナザーと共に狭苦しい部屋に押し込まれる」。そんな噂を聞いて、半年前の私は覚悟をしながら東の町を歩いてました。そしてこの、「白蓮荘」の看板を見つけたのです。

実際に見学に行ったら、なんて素敵な家でしょう。まず玄関の両脇の白蓮。私の好きな花です。広い裏庭、風通しの良い造り、家の中も広い、立地条件も抜群。

え、いいの?こんな新米アナザーでも入居できちゃうの??こんなお得な物件、スルーする手は無いよね???
いいよね?入っちゃうよ!?

そう思ったわけです。シェアハウスなら、先輩アナザーさんに色んなこと聞けるし、安心感もある!期待に胸を膨らませ、足取りも軽く白蓮荘に踏み込んだ私の希望は、すぐに打ち砕かれました。

誰もいませんでした。入居者が。

白蓮荘は、いわゆる「ワケあり物件」だったのです。

なぜ見学の時に気付かなかったのやら。その時白蓮荘の中に誰もいなかったのは、皆外出中だったからだと思ってました。実際に暮らしてみれば、私以外誰もいないし、とにかくボロい。雨漏り、開けにくい窓、軋む床。広いけどとにかくボロい。うかれていると気づかない。住んでみてやっと気付くんですよ…。

それだけじゃないんです。どうやらここ、出るようです。カサカサ走る茶色いアイツじゃありませんよ?いや確かにアイツも出ますけども!霊がでるんです。誰もいないはずの部屋から足音がしたり、勝手にお皿が割れたり、備え付けのピアノがひとりでに鳴ったり…。なんでも、昔洪水で死んだ「人間」の霊なんだとか。これが白蓮荘をワケあり物件にした犯人です。そりゃあ誰も入居しませんよ。

じゃあ、なぜ私は懲りずに半年も白蓮荘に住んでるのかって?

だって、悔しいじゃないですか…!「お得感」にまんまと騙されてウハウハ入居しちゃって…。こうなったら最後まで住んでやろうじゃないかと。それに悪いことばかりじゃないんです。広いからデビルがのびのびできます。

あ、そうだ。最初に言ったことを訂正しなければなりませんね。「独り」暮らしじゃありません。霊だっているし、デビル達のお陰で大所帯です。

これから話すのは東の白蓮荘の私と、その友人のお話です。



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