※若干不思議系.病みぎみ?



「゙生きる゙ってなんだと思う?」

夜空を見上げたまま問い掛ける少女
隣で寝転がる少年は目を開かずに答えた

「知らねぇ」
「素っ気ないな」

苦笑する彼女にも構わず少年は風を感じている
鋭く輝く金の双眸が少女を映した

「だいたい何でオレに訊くんだ.光良・・・は話にならねぇでも剣城や龍崎に訊けばいいだろ?」
「んー、まぁ・・・そうなんだけどさ」

歯切れの悪い少女に顔をしかめる

「なんだよ」
「いーや、わからないならそれでいいよ」

微笑みを崩さず言い切り、また星を辿る視線
不機嫌そうに起き上がった少年が少女の頬に触れて目を合わせさせる

「言えよ」
「えー...」
「いいから、言え」
「いや、何と言うか...」
「なんだよ」

諦めたようにため息を吐くと泳がせていた視線を合わせる

「・・・知りたくなっただけさ.他ならぬ英聖の考えを」
「オレの考え?」
「そう.英聖の考えることを、君の見ている世界を、私は共有したいから」
「・・・お前さ、かなり恥ずかしいこと言ってるって気付いてる?」
「・・・実は気付いてる」
「今さら照れんのかよ」
「むー、英聖は意地悪だな!」

ぐりぐりと頭を胸に押し付けじゃれついていたが、ふっと力を抜いてもたれ掛かる
抱き締めてやれば静かに背に回される腕

「オレが見てる世界、か...」
「そ」
「名前」
「んー?」
「それならお前には、どう映るんだ?」
「私?私は...」

ぱちぱちと瞬いた目が真っ直ぐに見つめる
ゼロだった距離から少し離れて少女の指が指揮し奏でるように舞う

「四季の流れを映す空があって、街があって、朝と昼と夜の全てにそれぞれの音があって・・・いつだって、隣に君がいてくれる」

「それが私に見える世界.私の、守りたいもの」
「・・・オレがいなくなったら、どうすんだ?」
「どうしようか?英聖がいないなら私が生きる意味もないんだ」

あっさり言ってのける彼女
笑顔のまま栗色の瞳から消えたハイライトにも動じず少年はため息ひとつで少女の髪を掻き乱す

「うわわわ、英聖?」
「バーカ」
「え、ひどい」
「んな顔すんな.・・・置いてくワケねぇだろ」

軽く吊り上げられた紫のルージュ
きょとんと丸くなった目がみるみる緩み満開の笑みとなる

「明日が来ても、一緒にいてくれるのかい?」
「お前一人じゃ危なっかしいからな.当たり前だろ」
「・・・へへ」
「なんだよ」
「んーん、何でもない.もうレポート書けなくてもいいやって思っただけ」
「・・・流星群、来ねぇしな」
「ねー」

寄り添って見上げた満天の空
流れ星は見当たらないけれど美しく星座が輝く夜だった

「・・・星の一生に比べれば、オレ達の一生なんて本当に一瞬なんだろうな」
「尺度が違うからな...今見ている彼等も、滅んでしまった輝きなのかな」
「さぁな」
「ねぇ、」
「あ?」
「もしも゙明日゙に逢えなくなったとしても、一緒に生きていたいと願うのは罪?」
「・・・それが罪でも、゙二人゙なら喜んで罰せられてやるさ」
「、ありがとう」

揺らいだ目元に光を見た気がして腕を引く

「別れが来るなら、明日なんて来なくていいのにな」
「離れるくらいならオレが拐ってやる.だから、オレの為だけに生きてみせろよ」

蝶々を腕の中に閉じ込めて、猛禽は鋭い瞳を和らげた


〔 あした星空の下 〕


(明日という日が来るかぎり)
(どこまでもどこまでも二人で歩いてゆこう)



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テーマ「人外ファンタジー」
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