46億年前、地球は誕生した。隕石衝突によって表面がぐらぐらに煮詰められマグマオーシャンとなった地球は、隕石中に含まれていた水蒸気で高層に雲を作り出す。その後隕石衝突が落ち着き、地球の温度が低下した頃水蒸気は雨としてマグマの海に長い間降り注いだ。マグマを冷やし大気中の二酸化炭素を取り込んだ水が溜まりそれはやがて海洋を形成した。海では最初の生命であるバクテリアが誕生し、それは進化を繰り返しやがて動物と植物と姿形を変えていった。以上が今日学校の授業で習った地球の長くて深い歴史とやらを自分の中で分かりやすくかいつまんでみたものだ。生命誕生の辺りは睡魔に勝てなくてちょっとあやふやだけどだいたいこんな感じだった気がする。

「生き物が生まれたのって凄い偶然でとんでもない奇跡だよね」

そう言った私に霧野はいきなりなんでそんな事と眉を潜ませた。そんな霧野を横目にがこんと音をたてて自販機の中から落ちてきたサイダーを取り出しながら話を進めた。

「だってさ、海が出来なかったら生命は生まれなかったわけでしょ?」

太陽との位置関係が丁度よく雨が液体のまま海として残ったのも奇跡なのに更にそこから命が生まれ、進化し、今の私たちがいるって事は私なんかには表せないくらいの凄い確率なんだと思ったのだ。もし隕石が衝突していなければ、もし水蒸気が含まれていなければ、もしバクテリアが生まれていなければ。そんな事を言い出したらきりが無いけれど、一回考え出したら止まらなくなってしまった。

「なら人間がここまで進化したのも凄い偶然と奇跡だよな」

私がサイダーを飲む横で同じようにがこんと何かを買った霧野の言葉に確かにと頷いた。科学が発達してここまで豊かな生活を送れるのも元を辿れば偶然何かを発見したから。進化とは違うが、私がお母さんのところへ生まれなかったら霧野とこうして自販機で何か買いながら話すこともなかっただろうし、会えてすらいなかったかもしれない。そう考えたら少しだけぞっとした。外国の映画によくある出会えた奇跡に乾杯っていうのもなんてくさい台詞だと思っていたが、今ならなんとなく分かる気がした。案外私たちは偶然なんていうあやふやなものの上に存在しているのかもしれない。そう結論付けてサイダーを一気に飲み干す。まだ開けたばかりで抜けていない炭酸がばちばちと喉で弾け少しだけむせた。




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