α公子成り代わり濃いめBL4
2023/01/05 20:09

 「番契約というものがしたい」と言った先生に付き合ってひと月。スネージナヤから璃月に来て早々に上着を剥ぎ取られた。

「少し借りるぞ」
「え、ちょっと、鍾離先生!?」

 取るだけ取って足早に去っていった鍾離先生と、俺の行き場のない手。別にスネージナヤほど寒くない璃月でなら上着くらい取られたって問題ないけど。それより、鍾離先生から香ったにおいのほうが問題だ。薬で多少抑えているだろうけど、あれはΩのにおいだ。
 鍾離先生は俺と番の契約をするにあたって、不都合があれば番契約はなかったことにできると言っていた。身体から第2性を再度なくせば問題ないと。なのに先生は未だΩ性のままだ。どう見ても不都合だろ、あれ。

「……はあ」

 よかった、仕事の1日前に戻ってきて。

───

「先生、どう見ても不都合起きてるよそれ」
「……これくらいなら問題ない」
「ええ?」

 鍾離先生は部屋のベッドで、俺の上着を抱いていた。先生と番になるにあたって勉強したので、これが巣作りだということには気がついたが、巣と言うにはあまりに服が少ない代物。巣作りにはαのフェロモンが染み付いたものがいいらしく、先生も俺に「来たのなら着ている服全部くれないか」と言って追加で下着以外を剥ぎ取った。下着は死守したとも言う。一応今俺は先生の服を着ているが、それも暫くしたら取られそうだ。追い剥ぎ……?

「折角公子殿の番になったんだ、自らこれを放棄したりしない」
「折角って……。それじゃあ、最初に言ってたことと違うんじゃない?」

 鍾離先生は「不都合があれば第2性を再度なくすから問題ない」「公子殿が気負うことはない」と本当に凡人する気あるのか疑うようなことを言っていた。でも先生の今の口ぶりじゃ、俺の番になることが大事なことで、不都合が起きようとこのままでいるつもりのような……。

「ここまで言っても伝わらないか……」
「いやー……、薄々なんとなく察してはいるんだけど……。先生そんな俺のこと好きなの……?」
「野暮だぞ、公子殿」

 先生はそうひとこと言って衣服に沈んだ。息を大きく吸い込むのが聞こえて気恥ずかしい。だってそれ俺がさっき脱いだ服なんですけど、あの。
 鍾離先生のことを好きかと言われると……、うーん、わからない。わからないけど、嫌じゃないと思う。番契約に乗っかるくらいなんだから、少なくともそれくらいは。

「先生、俺もそこで寝てもいい?」
「……公子殿は今自分が何を言っているかわかっているのか?」
「わかってるよ。でも巣作りと発情期は別……、今別だよね? 発情期みたな強いフェロモンのにおいはしないし。だから添い寝だけしよう」

 いそいそとベッドに乗り上げて先生に引っ付く。全方位俺のにおい。俺からしたら「何?」って感じだけど、鍾離先生はたぶんこれが嬉しい……、と、思う。たぶん。

「公子殿、人間というのは通常万年発情期であり、第2性があることでΩに発情期があるとはいえ発情期しか性交しない訳ではなく……」
「なになになにもごもご言ってて聞こえないよ」

 文句か何か知らないが、俺の胸元に顔を埋めてもごもご言っている。匂い嗅いでるってことは嫌じゃないんだと思うけど。背中を軽く叩いて睡眠を促す。

「公子殿……もしや不能なのか……」
「今なんて?」

 悪口言われた気がする。



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