α公子成り代わり濃いめBL2
2023/01/05 20:07
「αという強者の性を持ちながら、凡庸たるβである私に組敷かれるなんて屈辱でしょう」
「……はあ?」
執行官たちのほとんどが第2性への鬱屈した感情を持っているのはわかっていた。でもまさか俺がαだって知った富者にこんなこと言われるなんてね。呼び出しくらった部屋でいきなり押し倒された上にこの仕打ち、流石の公子も怒っちゃうぞ。
「あのさあ、富者のαへの恨みつらみに付き合う気はないよ。そういうのがしたいなら他当たってくれる?」
この場合、βにそうされて屈辱だって思うようなα(ファデュイ内の奴らは軒並み喜んでしまいそうだけど)捕まえた方が富者にとってはいいのだろう。俺は自分がαだからって、他のαといっしょくたにされてどうこう言われるのは普通に嫌。誰だってそう俺だってそうってやつ。富者だってβだβだと同じようなことを言われただろうに、人に同じことするんだからまったく。
じゃあそういうことなんで帰ります、と上半身を起こそうと富者の肩を押す。
「……他、ですか」
「他。俺みたいなのじゃなくてさ、そのほうがスッキリするんじゃないの」
知らんけど。上半身は起こせたけど、富者が退かないどころか俺の足の上に座っているから2人で向き合って喋る変な状況。
「俺はαがどうのって言われたところで「そんなこと俺に言われても困る」としか思わないし……。だって普段薬で抑制してる上に、組織内じゃないことになってるものだよ? 俺がいくつでファデュイ入ったと思ってんの?」
「それもそうですね……。失礼」
じゃあこの話は終わりかな、と思った矢先。富者に肩を掴まれ、上半身はベッドに逆戻り。
「は? え、ちょっと、」
「では執行官第11位公子として、同僚の男に組敷かれる屈辱を味わってください」
「なんで!?」
「なぜ、とは?」
心底聞かれている意味がわかりません、と俺の疑問を無視して、富者は服を脱がしにかかる。ちょっ、ちょっと待っ、手際が良い!
「俺富者に何かしたっけ!?」
「いえ、特には。好きな子はいじめたいタイプなだけですよ」
「普通好きな子に屈辱がどうとか言わない」
好きとか嫌いとかで誤魔化されると思うなよ。富者の手を掴んでこれ以上脱がされることを阻止する。
「私は言います。はい、これで解決しましたね」
「何も解決してないし俺は合意もしてない。強姦だ強姦」
「ああ、いいですね強姦。趣があって」
「ひ、」
スゥッと目を細めた富者の顔が怖くて息を呑む。た、助けてー! 誰でもいいから助けてー! こうなったら神の目でも邪眼でも使って逃げ出すしかない。
「大人しくしていたら優しくしてあげますよ。……もちろん抵抗してもいいですよ、私は。あなたをいじめるのが大好きですから」