α公子成り代わり濃いめBL
2023/01/04 23:16

 さぁ実験だと当然のように拒否権なくぶっ刺された謎の注射。違和感を感じたら呼べと放置されたベッドに横たわっていると、「おい、呼べと言っただろう」とベッド脇に博士が立つ。

「気分はどうだ?」
「さいあく……」

 いつもは容易に押さえつけられる本能が、制御できない暴れ馬となっている。目を閉じて気を落ち着けようとするけれど、首周りに博士の手が這って気が散っていく。ついでに身体はなぜか熱を持ち始めるものだから、気まずい思いをしながら、だるい身体を動かして手を跳ね除ける。

「ねえ、やめてよ、なに? 熱?」
「……ああ、そうだな」
「……博士?」

 なんだか、博士の息が荒い。待って、待て、これ、発情期のαに似ていないか……?

「っ博士! これ、なんのじっけん゛んぅ!?」

 問ただそうとしたその刹那、急激に近づく博士の顔と、飲み込まれた言葉。博士の手は俺の後頭部を押さえつけていて、離れようにも離れられない。好き勝手に動く舌に呼吸を奪われ、鼻で息もできずに博士の胸を叩く。

「っ、はっ、はぁ、ぁ゛、博士あんたまさか……」
「……っはあ、そう。今お前はΩで、私がα。うまくいったようだな、お前の身体も」
「阿呆っ……!」

 くそ、フェロモンに当てられると、αもΩもこんなに動きにくいのか。覆いかぶさる博士を退けることもできず、悪態をつくしかできない現状に舌打ちをこぼす。問題は、目の前の博士を求めてしまう身体の疼き。このまま先へ進んでしまいたいという衝動。

「はぁ……、いいにおいだ、公子。美味そうな……、興奮する、におい……」
「ぁ、ふ、」

 首筋に這う舌が、気持ちいいなんて、そんな。ずくずくと腹が疼いて、下腹部に血が集まる。

「クソッ、くそ……!」
「素直に身体を委ねろ、公子。なんてことはない、これは実験なのだから。お前はΩとして、私はαとして、本能に忠実になっても許される」
「っ、いやだ……」

 第2性に拘りはない。でも、それを勝手にイジくられ、いいように弄ばれるのは違うんじゃないか。そもそも、俺をΩにしたいなんてのは、ただの博士のαへの恨みとΩへの劣等感。

「あんたに抱かれるつもりはないよ……! 薬の効果ならもうわかっただろ、退け」

 暴れる本能を怒りで押さえつけ、博士を睨めつける。博士はため息をひとつ吐くと「……仕方ない」と呟いた。しかし俺の上から退く気配はなく、取り出したのは注射器。

「お前にはまだ薬が足りないようだな。ただの興奮剤だ、死にはしない」
「やめ、……ぃっ!」
「この薬について、まだ実験していないことがある。擬似的なΩが妊娠可能なのか、αと番となれるのか……」

 カッと熱くなる身体と沸騰する頭でも、博士の言葉は理解できた。疑似的なΩ、俺が……、妊娠できるのか、同じく薬でαとなった博士と番となれるのか。
 パチ、とベルトの留め具が外れる音がする。ああ、駄目だ、あつい。

「楽しみだな、公子」





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