カーヴェ成りif
2023/04/19 10:36


「ぼっ、僕と君が同居!? 君、本気か!?」
「冗談でそんなことを言うとでも?」
「冗談であってくれって僕の願いだよ! いいか、君は年頃の女性で、僕は男だ。例え君のほうが強いかもしれなくてもそれは……、良くないだろ!」
「部屋は別、鍵もつける。何か問題なんだ」
「もっ……、問題だらけっ……!」

 僕もアルハイゼンも年頃の男女。同じ屋根の下なんて、そんな……。いや、それ以外にもある。アルハイゼンにとって僕が危険だってだけじゃない問題が。

「同じ家に入って行くのを見られたらどうする? 人間ってのは邪推するぞ、いくら僕たちがただの同居だって言っても聞きやしない。やれ付き合ってるんですかだの聞かれるに決まってる。君の嫌いな面倒事だ」

 こういうのは人間関係に大打撃だ。アルハイゼンに浮いた話はないようだが、もし好きな人がいたら……、今いなくてもこれからできたりしたら「男と同居してた」なんて話は良くない種になる。

「交際していない男と同居なんて、君の醜聞になる」
「なら交際すればいい」
「えっ」

───

 口論でアルハイゼンに勝てるわけがない。まんまと言いくるめられて疑似交際&同居が決まった。「君が気にするなら、せめて交際の申し出は君からということにしてくれ」って……、それは、気にするんだ……?

「カーヴェ、鍵をつけようか」
「ついてなかったのか……。いや、そうだよな、君ひとりじゃあ必要ないよな」
「ああ。……鍵はひとつでいいな?」
「君の部屋にか? まあ、そうだな」

 人の家で見られて困るようなことは……、多分しない。それにアルハイゼンならノックしてくれるだろう。

「一応確認するが、鍵をつけるのは君の部屋じゃなくていいんだな?」
「僕の部屋につけてどうする。君の安全地帯を作らないと意味がないだろう」
「そうか」

───


「君は自分が襲われる側だと思ったことはないのか?」
「は!? ちょ、アルハイゼン! 待て待て待て、君なんで僕の部屋に……!?」
「交際している男女がすること、まあ多数あるが、夜更けにこの状況なら……わかるな?」
「こっ、交際って言っても、そんなの周りを納得させるだけの疑似的な……」
「私はそんなことは言っていない」
「えっ。……言、ってない、かも?」
「もういいか?」
「あっ、えっ、ちょっと、あの、アルハイゼン、待っ、待って駄目だよそんな、そん、」




─以下暗転オチでは使えない没ティナリとのお話(暗転オチではアルハイゼンの手が早すぎるので)─


「カーヴェ、ついにアルハイゼンと付き合ったんだ」
「ついに!? ついにってなんだ!? それに、その話もうティナリのところまで知れ渡っているのか!?」
「ちょっと、声が大きいよ……」

 うんざりした表情で耳をおさえるティナリに、慌てて口を塞ぐ。動揺し過ぎて声が大きくなってしまった。
 「ついにってなに?」とか「僕は家から出るとき人に見られないようにしてたのに」とか色々聞きたいことがある。ガンダルヴァー村のティナリにまで知れ渡っているとは一体どういうことだ。

「ついにって言うのは、まあ言葉通りだよね。君たちいつかそうなると思ってたよ」
「そ、そうなのか……!? 僕とアルハイゼンが? そりゃどっちも年頃だし、それなりに親しいとは思うけど……」
「……ふうん?」
「なんだ、その意味有りげな相槌」
「いや別に」

 確かに、アルハイゼンの親しい人にランキングをつけるなら間違いなく上位に食い込むだろう。その自覚はある。本来のカーヴェほど喧嘩はしていないし、アルハイゼンは女性だから僕もちょっと優しくするよう心がけているから。でも、それだけて交際だどうだなんて、短絡的過ぎる。みんな娯楽に飢えてるのか?

「あと、交際についてはアルハイゼンが言ってたから」
「アルハイゼンが?」
「カーヴェがやっと告白してくれたって」
「うっ……、ぐうぅ……!」

 確かに、僕から交際を申し込んだことにするって話だったけど……!

「なに、その反応」
「ティナリ、これには色々と訳があって」

 家にドでかい風穴が開いたこと、アルハイゼンの提案、その内容。どうして交際していることになっているのか、そして本当に交際はしていないこと。話していくと、ティナリの顔が段々呆れ顔に……。

「なるほどね……色々と僕から言いたいこととか、教えてあげたいこともあるけど、殆どは君が自分で気が付くべき事だ。どうしようか」
「今の話でティナリには一体何がわかったんだ……? なぜ当事者である僕よりすべてを見通していそうな……」
「僕のほうが冷静だからかな」
「そ……、それはそう……」

 悔しいことに、アルハイゼンに振り回されっぱなしの僕は大抵冷静じゃない。本当に、悲しいけど。ただ、僕には気が付かなければならない何かがある、それはわかった。

「僕から言えるのは、アルハイゼンは多分君との交際を疑似交際とは思っていないってこと。思っていないと言うより、するつもりがないって言ったほうが正しいかな」
「……僕と本当に交際するつもりってことか?」
「あくまで僕の視点だとって話。実際どうなのかは本人に聞いたほうが早いよ」

 うむむ、たしかにそう。アルハイゼンが、僕と本当に交際。つまりそれって、アルハイゼンが僕のことを……。

「結婚式挙げるなら呼んでね」
「きっ、気が早い!!」
「うるさ」

(ちゃんと好きなんだよなあ)
君がいくら強いからといって、そうホイホイと男に隙を見せるもんじゃないぞ! 心配だ! 君まさか誰にでもそう、ってことはないよな……? 頼むから自分の魅力を理解してくれ! の成くんだね。




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -