金曜日の博士の夢(gnsn)
2022/09/01 23:17


 金曜日の夜は、いつも変な夢を見る。

 顔の上半分を覆う変な仮面を着けた水色の髪の男が、私を視認して「起きたのか」と声をかけてくる。現実世界で私が起きている間、こちらでは眠っているらしい。最初にこの夢を見たときにそう聞いた。夢を夢だと認識している、しかし明晰夢程好き勝手にはできない奇妙な夢だが、たまに見るぶんには悪くない。ファンタジックで面白いし。

「おはようございます、博士」

 そう、この人は博士だ。なんだかよく知らないけど、博士らしい。深く考えることを拒否しているとも言う。頭の中には必要な情報が詰め込まれているが、夢の中でそんなに真剣に考えたりはしたくない。どうせ夢なのだから。

 博士は、私が起きたと見るや早々に注射器を幾つか並べて腕を出すよう要求してくる。夢の中ではなんだか毎回注射針を刺されている気がするのだけど、これは気のせいだろうか。…………いや、気のせいではない。毎回刺されている。寝てる間にやってくれませんかね。あ、やってる。そうですか。まあでも、博士は博士らしいし、夢の中の私は週に1度しか目が覚めないらしいので注射三昧は多分仕方がないのだ。多分。よく知らないけど。どうせ痛くないし。
 素直に腕を突き出すと、手際よく採血。次に好き放題怪しい色のものを注射。うーわ、これ大丈夫なやつかな。色がやばい。人体に害を及ぼしそうな色をしている。

「……博士、少し目が霞みます」

 起床前の兆候とは違うやつ。即効性にも程がある激色の注射は、多分大丈夫じゃなかったやつだな。夢の中の私が週1という出勤日として考えると怒られそうな日にちしか起きられないのは、もしや博士のせいなのでは? でも、私の仕事はその博士のモルモットなので何も問題ないってワケね。そんな感じする。現に目の霞みを申告しても一瞥の後軽い舌打ちというあんまりな反応。ねぇー、ちょっとぉ、その反応ひどくなーい? この現状お前のせいやぞ。非難の視線を送るも、背中が「黙れ勝手に寝てろ」と語りかけてくる。背中で語るってこういうことを言うのね。この野郎。針を刺すだけ刺したら、用は済んだとばかりに無関心だ。アタシはもう用済みってコト……!?

 いつもずっとベッド(手術台や実験台とも言う)におとなしく座ってると思ったら大間違いだからな。でも今回は前が全然見えないからおとなしくする。命拾いしたな! 雑魚の捨て台詞あるあるランキング堂々1位。隠しきれない雑魚臭。恥ずかし。
 ごろ、と寝転がってただひたすら博士の背中を見つめるが、何してるのか1ミリもわからない。セルフモザイクが掛かってるから、私の見つめているものが本当に博士なのかどうかすら怪しいなこれは。動いているからギリ博士だと思うんだけどな。折角の夢の中だというのに、博士のせいで霞む視界のまま、何もできず起床まで待つのか。暇だ。





prev | next


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -