ビュウビュウ吹き付ける風に乗った無数の砂粒が白磁の頬を叩く。それらは埃っぽい臭いと共に熱を孕んで、少しずつしかし確実に、残り少ないミュゲの体力を奪いつつあった。
  全弾撃ち尽して空っぽのリボルバーに再度弾丸を込める。
  悪視界に加えて相手が防御体勢ばかりとるものだから、なかなかダメージを与えられない。完全に劣勢だった。
「――っそれでも、諦めるわけには参りませんわ!」
  敬愛する主たちを眼裏に浮かべて、自らを奮いたてるように撃鉄を起こす。
  しかしそんな一動作の間にも熱風と共に砂粒が叩き付けられる。ふっ、と突然湧いた、まるで頭の中に鉛が流し込まれたような感覚に傾きかけた体を支えようとしてたたらを踏んだ。薄い唇を噛んで無理矢理頭にかかるもやを振り払い、熱砂の帳の向こうにいる敵に視線を凝らす。
  瞬間途切れて見えた向こう側にくすんだ緑を捕えた。ほぼ同時に白銀の愛銃を構え、トリガーを弾く。立て続けにパン、パンと乾いた音が響いた。
  鈍い緑の弾丸が敵の皮膚をえぐり、意識を刈り取る。巨体が倒れこみ、重い衝撃が地面を通してミュゲにまで伝わった。
  ――あと、1匹!!
  光に包まれて飛び出てきた白い鳥を目の端に捕えてつつ、未だ周囲を飛び交う砂粒たちに似た茶色の弾丸を装填した。
  相手が動くより速く、風でそれるだろう弾道を予測して撃つ。5弾中4弾が相手を貫いて、目に見えて深手を負ったのが分かった。同時にミュゲの方でも飛び回る極小の褐色の刃たちに最後の体力が削りとられる。
  視界が暗転する直前に脳裏に浮かんだのは、少し年下の主の顔と、口下手な愛する少年の顔だった。
  ――いつになく全力を出して少し疲れてしまったから、明日は甘えに行かせていただきますわ、ミリアム。




日記のミュゲ語りに書いた戦闘シーンのショートショートの再録です。ほんのちょっと修正……あと、あしかさん宅のミリアムくんのお名前お借りしてます。
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