剏テ市家にて



『はい古市、ケーキ』

「へ?…え…え?…これ、杳子ちゃんが焼いたの?」

『要らないならいいよ、万能処理機タツミーが家にあるし』

「いやいやいや!もらう!食べるよ!!ありがとう!!」

『いえいえ。どうせ失敗作だからね』

「え」

『いやね、本命の彼がもうすぐ誕生日だからケーキの練習してるんだけどさ。なかなかうまくいかなくて』

「え…いや、あの、杳子ちゃん。オレたち付き合ってるよね…?」

『うん。だから本命って言ったでしょ』

「え。………」

『…てのは嘘』

「だよねええええ!?びっくりした!なんか涙出てきた!!」

『びっくりしたのはこっちだよ。ベタすぎるのに、早くツッコんでくれなきゃ困る』

「ツッコめない冗談言うからだよ!ああもう…」

『泣くなよ古市。好きだよ』

「えっ」

『なに』

「いや…杳子ちゃんから好きって言われたの、告白以来…」

『恥ずかしいこと思い出さないでよ、キモいな』

「キモいって…」

『古市に聞こえてないだけで、私はいつも好きだって言ってるよ。気を抜いたら他が疎かになっちゃうくらい、古市が好き』

「!杳子ちゃん…オレも、す」

『つうかケーキ溶ける。はやく冷蔵庫入れてきなよ』

「言わせて。聞いて。ねえ。杳子さん?」

『あ。あとこれ、辰からのポッキー』


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