(120814)

毎年恒例の誕生日会にて



「見ーつけた」

『理一おじさん。ちびっ子たちと隠れん坊ですか?』

「ううん。後片付けはその辺にしてさ、散歩行かない?」






「ほんと杳子は人の多いところ苦手だね」

『…バレてましたか』

「はは、みんな知ってるよ。だからみんな杳子に仕事任せて居間にいるだろ?」

『ですよねー。学校とかと違って、強制されないのは有り難いです』





『……(じいっ)』

「…どうかした?」

『いえ。お父さんとか他のおじさんたちは、いくら苦手でも家族みんなと同じ空間で過ごすことが大事なんだって必ず一度は言ってきましたけど…理一おじさんからは聞かないなって』

「ああ。思ってないことは言わないよ」

『思ってない?』

「…確かに、空間を共有することは社会において大事なことだって思うけど。家族だからね。ああ怖いなあ、とか思ったら、無理して一緒に居る必要はないと思うんだ。少なくとも俺はね」頭なでなで

『理一おじさん…』

「そういう意味でも、家族って良いだろ?」

『……はい!』





「そういえば杳子に訊きたいことがあるんだけどね」

『はい。なんですか?』

「それ」

『え?どれでしょう』

「敬語。近い親戚なんだからもっと砕けた話し方してもいいと思うんだけど。夏希にもたまに敬語だよね?」

『あー……でも、敬語じゃなくすると…』

「すると?」

『…理一おじさん、覚えてません?私が小さいころ栄おばあちゃんの真似ばっかりしてたの』

「ああ、そういえばしてたね。話し言葉とか。小さい子が何だいとか古風な話し方するの可愛かったなあ」

『それ、です』

「え?…あ、もしかして」

『その時に癖づいちゃったみたいで、敬語外すと咄嗟に古風な喋りが出てしまって…。前に夏希と話してたときにも、って理一おじさん笑ってます?』

「わ、笑ってないよ大丈夫」

『笑ってるじゃないですか!もう…ほんとに悩んでるのに』

「や、でもさ。それもまた可愛いと思うよ?」

『慰めはいりません』

「慰めじゃなくてほんとに。古風な言葉が出ちゃう若い子って、俺嫌いじゃないなあ」

『……』

「…どしたの?」

『…いえ。理一おじさんはまだまだ若いから、20代のピチピチした女の子とかゲットできそうだなって思っただけです』

「……」

『え?なんで沈黙』

「いや。…10代は、さすがに犯罪かなーって」

『あ。夏希は駄目ですよ、健二くんというスーパーピュアな彼氏がいますから』

「夏希じゃなくて(指差し)」

『え?(うしろ振り向き)……り、理一おじさん、だれが見えてるんですか』

「いやー、お盆だからね。夭折した子たちが帰ってきて…じゃなくて」

『理一おじさんノリツッコミとかできるんですね』

「初めてしたよ。というか杳子、そんな鈍感じゃないでしょ」

『…まあそれなりに』

「……で。どう。犯罪だと思う?」

『…三親等内での婚姻は法律上認められていませんね』

「おっ、勉強してるねえ。さすが受験生」

『…その問題解かせるためにこんなこと言い出したとか』

「…杳子がそう思いたいなら無かったコトにするけど?」


気づけば手は握られています。








『あ、そう考えれば佗助おじさんは三親等内じゃないんですね』

「え。杳子…」

『…理一おじさんって昔からちょっとだけ佗助おじさんのこと敵視してますよね』

「してないよいくら同い年で佗助も俺も若々しくてデキるからってそんな」

『……』

「…せめてノリツッコミしようよ」

『いえ、本音に聞こえたもので』



夏希ちゃんの初恋が佗助おじさんだったように杳子ちゃんの初恋は理一おじさんだといいです。

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