演習をしている院生たちを眺めながら、次の授業内容を考える。一回生に比べて上級生はまだ楽だ。どんどん難しいことを押し付けてゆくことができる。思いつくままにやらせてみると、今まで学んできたことが頭に入っている彼らは時に予想もつかないことをやってのけるから。

 試合を終えた院生たちに細かい指導を加える講師もついでに観察し、評価していると、一人の院生がこちらに走ってきた。真面目な表情で直立している院生は学級委員で、印象は悪くないはずだけれど、何故かいやな予感しかしない。

 案の定その口から出た勘弁願いたい申し立てを即刻却下すると、しつこく食い下がられた。いや、だから。


「那鳥先生は院生時代、檜佐木副隊長と斬術で常に首位を争っていらっしゃったと伺いました!ですから是非とも!そのお二人の試合を見せて頂きたく!」

「同じこと二回も言わなくても解るよ。てか失礼だな、争ってたじゃなくて毎回私がトップだったんだけど」

「それならば尚更!現副隊長をも凌駕する那鳥先生の試合を!」


 授業内容をまとめていた冊子を顔に押し付け、現実から逃避する。だから若い者は厄介だ。真面目、熱血。それが掛け合わさったものは取り扱いが難しい。先生にあるまじき思いかもしれないけれど、熱血ほど面倒くさいものはない。


 無駄に大きくはっきりした声の提案に便乗した院生が集まってきて、あっという間に取り囲まれる。まさに四面楚歌状態。五年間ずっと通年で指導してきた院生たちだ。様々なことに慣れているのだろう。厄介。

 冊子を外して学級委員を見ると、その向こうで目が合った檜佐木がにやりと笑う。その小憎らしい微笑につい込み上げた怒りに、院生たちが沸いた。






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