血の流れゆく道が透けて見えてしまうほど。まるで病弱な子どものように滑らかで透明な手の甲を、指の腹でそっと撫でてみる。つめたい。 途端に恐怖がどこからか押し寄せてきて、思わず力を入れると、おなかに回されたその手はぴくりと動いた。耳元でイヅルくんが私の名前を呼んで、それだけでわたしの平静は取り戻される。 抱き込むように背中に体重をかけてきたイヅルくんのかたちに合わせるように背を曲げると、イヅルくんがくすりと笑った。よかった、大丈夫みたいだ。珍しく発生したお腹の虫は大人しくなったらしい。 「ごめんね、おかしなことして」 「ううん。なんだか懐かしいから」 「…そっか」 だからもうすこし、このまま。その思いが通じたかのように、イヅルくんは私を膝の上から下ろそうとしない。音も光もないリビングで二人きり。背中に伝わる呼吸を肌で感じながら、ふたたび目を閉じた。 120824 |