静かな寝息を立てるそのひとに布団をかけ直して、自分は部屋の隅から引っ張り出した布団を身体に巻く。そうして慎重に窓を開けた。

 ちょうど立ち上がった位置から見える未だ明るまぬ空は、それなのに鳥の声を流してくる。随分と早起きのようだ。ちゃんと眠れたのだろうか。


 ふと、気配を感じて振り向くと、温かい胸に包まれることになってしまった。これでは私が空を見られない。


「まーたそんな格好で。外から誰か見てたらどうするんスか」

「喜助さん」

「ハイ?」

「背中から抱き着こうとしたの?それなら失敗だね」


 もぞもぞと動いて身体の向きを変えようとすると、どうやら失敗という言葉に気を害したらしい喜助さんにがっちりホールドされてしまった。喜助さんこそ、そんな格好で窓に寄ったら誰かにお菜にされてしまう。

 見上げると、帽子のない喜助さんがまるで優しいひとみたいに微笑んで、背に回した手をするりと下方に滑らせた。


「もう朝ですよ」

「アタシの朝は昼っスから。それに、朝だとしてもまだ早い」


 鳥の声が増えて、頭だけで振り返ると空も大分明るくなってきたようだ。冬の朝が遅いとしても、たしかにまだ朝ごはんまでには時間がある。

 あつい胸板に手を置いて唇で触れてみると、喜助さんが私を連れたまま後ろに身を引き、気付けば二人でもとの布団に倒れ込んでいた。わたしの耳を遊びながら、喜助さんがなにか言う。何を言ったのかは分からなかったけれど、とりあえず肯定で返しておいた。

 鳥の声は、もう耳には届いてこない。もしかしたらやっと眠りに就けたのかもしれないな、と思いながら、自分から出た息が白く溶けていくのを見ていた。









(きす、けさん)
(どうしました?)
(見て、息が白い。喜助さんのも)
(寒いっスからねえ。すぐに温めてあげます)

111007

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