天女に惚れて傍観主を排除する

@某月某日(晴天)
今日はいつもより実習が上手くいった。やはりペアを組む相手との相性と言うものは大切だと思う。次も合同実習の際は勘右衛門を誘おうと思う。珍しく八左ヱ門が好成績だったのもペアがい組の■■だったからではないかと推測される。
珍しいことと言えば、空から女が降ってきたそうだ。今晩はくのたま長屋で山本シナ先生の監視体制の下、様子を見ることに決まったらしい。

@某月某日(晴天)
先日の女は天女だったらしい。意味が判らんので三郎が情報収集から戻るのを待って集まることが決まった。
今日苗字の味噌汁から豆腐だけを奪い去ったのは紛うことなき豆腐小僧だったのだろう。豆腐小僧も大変だ。兵助曰く豆腐しか食えない奴らしいので、仕方ないから苗字の植物性蛋白質を譲ってやろうと思う。同じことを勘右衛門に教えてやったらイイ笑顔で豆腐小僧は雑食だと教えてくれた。なん、だと!

@某月某日(曇天)
今晩は夜間演習がある。
突発的過ぎて脳みそが対処出来ない。まあ苗字は実技大得意のは組だから良いけれど、他の連中は早々に寝て英気を養うとか何とか。相変わらずい組の奴らは抜き打ちの実習に弱いものだと揶揄っておいた。

@某月某日(雨天)
夜間演習から続けざまに実習とか先生は苗字たちが憎いんだ。山田先生の髭なんて奥方に毟られてしまえ。学園長先生の眉毛でも可。
明日も実習の続きだから今日は早く寝る。

@某月某日(雨天/曇天)
ろくねんせいとごうどうなんてきいてない

@某月某日(晴天)
一年生の井桁模様が懐かしい。見知らぬ女がおばちゃんの隣で配膳を手伝っていた。おばちゃんもいい年なので後釜でも見付けて来たのだろうか。飯さえ美味ければ何でも良いが。因みに顔は好みだが脚はもう少し肉付きの良い方が良い。
実習明けの座学とか明らかにお昼寝時間だと思う。ねむねむ。白米が延々と増殖する夢をみた。ふえるはくまい。うまうま。

@某月某日(曇天/晴天)
委員会で七松先輩に引き回された。いっぺんあの人馬に括り付けて引き回されれば良いと思う。そうしたら苗字たちの気持ちが十二分の一くらい判るような気がする。
そう言えば食堂で配膳係をやっているのが噂の天女だったらしい。予想外にふつうだった。三郎曰くかなり面白いが普通の女だと言うので、まあそれなりに面白いただの女なんだろう。

@某月某日(晴天)
最近実習が多い

@某月某日(晴天)
くのたま教室に例の天女が馴染んでいた。男を恐れぬくのたまたちが相手では天女も形なしのようだ。戯れている様はどう見ても年頃の娘にしか見えない。

@某月某日(晴天)
四年生のタカ丸さんを連れてお使いに行った。道すがらタカ丸さんはい組の■■は髪が良い云々と語っていたので適当に相槌を打っておいた。いくらサラストでも顔面が平凡では作法の立花先輩には勝てないと思うが、敢えて波風を立てる必要もないので口を噤む。まあ十人十色と言うから人の好みに口出しする必要もない。

@某月某日(曇天)
食満先輩から何故か飴を貰った。理由は判らんが、甘いものは苦手だと言いそびれたので部屋にでも置いておこうと思う。

@某月某日(曇天/強風)
「名前くん」と名前を呼ばれた。誰かと思ったらにこにこ笑った配膳女だった。名乗った覚えはないが、どうやら全生徒の顔名前を一致させると意気込んでいるらしい。小松田さんの隣に腰掛けた配膳女は楽しそうに笑っていた。
今日は蕗が美味かった。

@某月某日(曇天)
配膳女と呼んだら盆が投げ付けられた。天女と言う割には乱暴だが、澄まし顔よりマシだ。名前を聞いていないから名前で呼べないと困ったように教えてやればその場に項垂れた。因みに名前なんて疾うに三郎から教えて貰っている。

@某月某日(曇天)
明日から試験。一年生の頃から苗字名前と大きく書いた名前だけは誉められているので、今回もそこだけは自信がある。

@某月某日(曇天/晴天)
筆記試験さえなければ…!

@某月某日(晴天)
級友たちと健闘を讃え合った。やれるだけのことはやったので、もう苗字たちに出来ることはないと思う。い組では勘右衛門と■■が答え合わせをしていたが、会話の内容はおれの知らないことばかりだった。…や、やれるだけのことはやったつもり、だ。

@某月某日(曇天/晴天)
待ちに待った実技。ふはははははは!

@某月某日(曇天)
試験結果は明日知らされるらしい。三郎がにやにやとこっちを見ていたので苛立ち混じりに飼育小屋から連れ出した虫たちを部屋に放ってみた。今更だが、雷蔵の部屋でもあることを失念していた。まずい。

@某月某日(曇天)
せんせい…、きのしたせんせい…、しんきゅうが、したいです…!

@某月某日(晴天)
部屋に大量の椿象が沸いて出たことに驚いたのか雷蔵が手入れをしていた小刀で怪我をしたらしい。ちょっと罪悪感を覚えたので峠の茶屋で団子を買ってから見舞いに行ったところ、三郎が激怒し八左ヱ門を詰っていた。土下座して管理不行き届きを詫びる八左ヱ門にも悪いことをしたので、真実を話す気はないが団子を一緒に食おうと必ず誘うことにする。ついでに苗字の取って置きの茶葉を使ってやろう。

@某月某日(晴天)
配膳女こと□□とそれなりに親しくなった。雷蔵の怪我を馬鹿みたいに心配してるのは好感が持てると兵助も言っていた。
今日の酢の物は奴が作ったらしい。少し酢の気が強かった気がする。完食。

@某月某日(晴天時折雨天)
□□…配膳女は今日も忙しなく動き回っていた。やっとこさ全生徒の名前を覚えたらしいが三郎と雷蔵の見分けは未だつかないようだ。苗字の名前を尋ねてやれば頬を膨らませていの一番に覚えましたと返って来た。苗字の名前が一番らしい。ふふ。
■■が授業中に怪我をしたらしいが、慎重に慎重を期す■■にしては珍しいことだ。試験を終えて気でも抜いていたのだろうか。苗字も気をつけよう。

@某月某日(小雨)
■■の見舞いに八左ヱ門と行った。怪我自体大したことはないようで安心したが、顔色悪く何かをぶつぶつと呟いていた。一体どうしたんだろうか。

@某月某日(雨天)
い組でも■■の様子が可笑しいと噂になっているようだ。今まで親しくしていた□□を避けているらしく相談を受けた。正直理由が判らないので暫く様子を見るようにと伝えた。

@某月某日(雨天)
自室の掃除中に以前食満先輩に貰った飴が出て来たので□□にやった。女は甘いものが好きだと言う三郎情報に誤りはないようだ。次の休みに連れ立って茶屋へ行く約束を交わした。…たのしみ。

@某月某日(曇天)
八左ヱ門からここ数日■■の顔を見ていない気がすると言われて考えてみれば、確かに見ていないような気もする。体調不良だろうかと兵助に尋ねれば、い組でもよく判らないらしい。□□にも尋ねたが、食堂にも顔を見せていないと言う。勘右衛門が様子を見に行くそうだ。

@某月某日(曇天)
学園長先生に呼び出しを受けた。延々と□□について聞かれたが、そんなことなら本人に聞けと言いたい。三郎たちも呼び出されていたらしい。

@某月某日(晴れ)
□□と出掛けた。
………
………
…以上っ!

@某月某日(晴れ)
苗字の見立てに誤りはなかった。平が褒めていた髪飾りは何を隠そうこの苗字名前の贈り物である。…よく似合っていた。

@某月某日(晴れ)
今度の休みに勘右衛門たちと出掛ける約束をした。■■や三郎たちも誘おうと言ったら兵助が□□も誘おうと言ったので人数が倍以上になった。

@某月某日(曇り)
潮江先輩とお使いに行くことになった。何故選りに選って潮江先輩なのか。あの人暑苦しいからあんまり得意じゃない。潮江先輩と一緒に行くなら、食満先輩の方がまだマシだと思う。昼前までに相手方へ辿り着けば良いと言われているにも関わらず早朝から出発するそうだ。もうやだ。ねむい。

@某月某日(曇り)
帰って来たらタカ丸さんが□□を襲ったとか聞かされた。なにそれ。意味判んない。取り敢えず喚き立てる三郎じゃ役に立たないから雷蔵さんに話を聞くことにする。□□は無事らしいので、先ずは医務室で善法寺先輩に話を聞く。もうほんと、意味が判んない。

@某月某日(濃霧)
はなしをきいた

@某月某日(濃霧)
□□と話をした。包帯を負かれた腕の傷は大したことないそうだが、苗字の顔を見て泣き出した。□□が学園へやって来て半年以上経ったが、初めて…泣いてる顔を見た。
どうして。なんで。□□が。なんで。どうして。タカ丸さんが。タカ丸さんが□□を。□□をタカ丸さんが。なんで。なんで□□が。なんでタカ丸さんが。なんで。なんで。なんで。なんで。なんで。なんで。どうして。なんで。なんで。なんで。なんで。なん、で。

@某月某日(小雨)
現場を目撃したと言う三之助から話を聞いた。タカ丸さんが□□を害したのは間違いないそうだ。理由は判らない。□□も普段と変わらずおばちゃんの手伝いをしていたと言っていた。それに関しては兵助がおばちゃんに確認済み。現場を見ていたのは三之助だけではなかったので一年の摂津のや猪名寺からも話を聞いた。タカ丸さんは何かを呟きながら□□に襲い掛かったと言う。それは突然で側にいた善法寺先輩が止める間もなかった。取り押さえた食満先輩と七松先輩が言うには天女の所為で■■くんがと呟いていたらしい。…□□の所為とは一体どういう意味なのか。

@某月某日(雨天)
い組の■■が合同演習の最中に呼び出された。どうやらタカ丸さんの凶行には■■が関与しているらしい。だがしかしそんな筈がない。■■は□□と親しくしていた。□□をかわいいと一番に言ったのは奴だ。だから嘘だ。

■■が□□を疎ましく思っていたなんて。

@某月某日(雨天)
タカ丸さんが誰よりも■■を好いていることは知っていた。どうせ相手にするなら苗字的には立花先輩や後輩である平の方が好みだが、人の好みだって十人十色なのだから口出しをするつもりはない。
彼は■■の為に彼女を害そうとしたそうだ。

@某月某日(雨天)
■■がタカ丸さんを使って□□を害したと噂になっている。そんな、筈は。

@某月某日(雨天)
■■へ食事を持って行った。奴はいつもと変わらない真剣な表情で□□は天女で苗字たちは謀られているのだと言った。一体どうしてしまったのか。

@某月某日(雨天)
長屋の片隅で隠れるようにして田村が泣いていた。

@某月某日(雨天)
雷蔵たちと話をした。苗字たちの大切な友人である■■は気が違ってしまったのかも知れない。狐にでも誑かされたのか、それとも何かがあったのか、判らない。ただ、罪がない者を園内で害することをこの学園は許していない。そんなこと、■■が知らない筈ないのに。

@某月某日(雨天)
三郎と二人、木下先生に呼び出された。このまま■■を学園においておくことは出来ないと言う。

タカ丸さんは自主退学が決まったそうだ。

@某月某日(雨天)
雨が降っていた。





@某月某日(曇天)
友人が一人、学園を去った。
実家の小料理屋を継ぐらしい。二度と会うこともないだろうが、どうか末永く健勝であるように祈っている。
今日から食堂に□□が復帰した。兵助が味噌汁の具材に豆腐をねだり、勘右衛門が呆れたように頭を叩く。今日も雷蔵はA定食とB定食で迷い、横から三郎が勝手に決める。八左ヱ門は毒虫が逃げ出したと駆け出し、苗字は隣で笑う□□を揶揄って怒らせる。

煮浸しが好物だと笑った男はもういない。





以上、苗字名前の日記より一部抜粋

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