彼女が帰った後のはなし


天女さまはそりゃもう可笑しな方だったわ。だってあの方、洗濯も裁縫もろくにご存知なかったんだもの。だからわたしが教えてあげたの。そう、洗濯の仕方。裁縫は別の子が担当。一人占めなんてしたら他のくのたまが怖くて堪らないじゃないの。それで、あの方のお話ね。家事なんて出来ない癖に、どうしてか料理だけはやたらと上手かったわ。食堂のおばちゃんなんて天女だろうが人間だろうが構やしないって仕込んでたんだから。まあでも、帰っちゃった。それに、天女さ…名前さん。ええ、名前で呼ばないと怒るのよ。気取ってなくてわたしは好ましく思うけどね。そう、名前さんに。料理を習ってたの。こっそりね。だから今度披露しようと思うんだけど。え?そうね、忍たまに分けてあげても良いわよ。名前さんに習った料理だもの。

ああ、あの人。鉢屋たちが毛嫌いしてたな。おれ?おれは別に。だってあいつらと仲良しこよしやってるつもりは無いからさ。なんだっけ…ああそうだ、くのたまだろ?あいつ。ほら、名前は知らんが大人しそうな面したやつだよ。久々知の幼馴染みだったか尾浜の縁戚だったか忘れたが、天女が来る前からあの連中はあんな感じだったな。そう。仲良しこよし。他の学年?そりゃ懐いてる奴が大半だったかな。少なくとも有害じゃなかったからね。あの人…天女だよ天女。あの天女に敵意剥き出し。疑うだけなら未だしも、先生たちが放置してる存在に殺気ぶつけるって何事だよ。まあまるで意に介してなかったみたいだけどさ。

妖術だって騒いでましたね。誰が…って、不破先輩たちですよ。ぼくたち二年生は確かに名前おねえさんを疑っていましたよ。だって中在家先輩たちが疑っていたんですから、当たり前のことです。他の連中がどんなに懐いても、ぼくたちだけはしっかりしなきゃと思ってたんです。でも…名前おねえさんは本当に普通の人でした。疑ってたのが馬鹿みたいに普通でした。ろくに字も読めないで、銭の数え方だけを一年は組に習って、それで生きていました。妖術が使えるならそんな苦労をする必要もないじゃないですか。中在家先輩が名前おねえさんに少しずつ字を教え始めて、ぼくたちがおねえさんと喋るようになって、それでも不破先輩たちは言い張ってました。名前おねえさんは妖術使いなんだって。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -