広がる青空の下で | ナノ
なんで、どうして…そんな言葉ばかりが俺の胸を駆け巡る。
目の前で少し照れたように笑うアイツの横には知らない男。
去年の夏、健二兄さんと一緒に行ってきた陣内家で出会ったとアイツは話していた。


「ねぇ、佳主馬君」
「なに?静夜」


ほわほわと俺にも滅多に見せてくれないはずのその笑みをアイツは堪能している。
その笑みは俺が一番欲しかったのも、俺に一番多く向けてほしかったもの。
確かに陣内家には俺も色々とお世話になっている。詳しく行ってしまえば俺ではなく俺の両親。
たった数日、たった数日でこんなにもこの男はアイツとの距離を狭めていた。
握った拳に無意識に力がこもる。


(どうして…)


お前を、一番最初に笑わせたのは俺なのに。
お前と、一番最初に仲良くなったのは俺なのに。
お前に、一番最初に好きになったのは俺なのに。

お前との関係を壊したくなくて、この想いはいつか伝えようって思っていたのに…。
本当は、親友なんて関係では物足りなかった。好きだって気持ちを伝えたかった。
でもそれを言ってしまったらこの関係が壊れてしまう。それが怖くて今まで言い出せなかった。


「…どうしてっ」


こんなにもアイツが好きなのに。こんなにもアイツを愛しているのに。
アイツの心はあの男のもの。アイツの笑顔はあの男のもの。

少しだけ繋がったあの男と俺の視線。
俺を視線が合った瞬間、あの男の瞳は微かに弧を描いた。
まるで俺をあざ笑うように…。


(静夜…)


もう、この手を伸ばしてもお前には届かないのか?
この想いを伝えても、お前には伝わらないのか?

握った掌が熱い。体の中全てが心臓となってしまったかのように強く脈を打つ。


(ああ、初恋は実らないって本当だったんだな…)


いっそお前をさらってしまえたらどんなにいいか…。




儚い恋物語
(でも、これだけは覚えていてほしい)
(俺は、お前が本当に大好きだったんだと…)
111016 執筆

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