「ほら!静夜!早くしろよー!!」
「……っ」
そう言って私の少し先を行く君。
何故かその顔にはいつも満面の笑みしか浮かんでいなくて。
どうして私なんかと一緒にいるのか、とか。
どうしてこんな私に構ってくれるの、とか。
そんな疑問が浮かんでは消えて。
その度に俯く私を君は心配そうに気遣ってくれる。
「おい、どうした?どこか痛いのか?」
「……。」
心配そうに私の頭をなでる君の手。
その手は今まで感じてきた中で感じたことがないほど優しい。
虐められはじめたその日から滅多なことでは声を発さなくなった私を気遣うように、君は私の体のあちこちを心配そうに見つめる。
「なぁ、大丈夫か?足でもうったか?それとも誰かに嫌なことでも言われたのか?」
違うよ。そう言いたいのに私の口からは息の漏れる音しか出ない。
私はその意思を必死に表そうと首をブンブンと横にふる。
そうしたら君は安心したようにほっと息をつくんだ。
こんな気味の悪い私なんか放っておいて他の子たちのところにいけばいいのに。
こんな私なんか無視してしまえばいいのに。
そうすれば私と一緒にいるって理由だけで君まで虐めの対象にならなくてすむのに。
むしろ私のほうから君を拒絶してしまえば君はあの子達の仲間に戻れるのかな?
そうしたら君はもっと楽しそうに笑うのかな?
そう頭で考えていても臆病な私はそれをなかなか実行に移すことはできない。
差し出される手を振り払ってしまえば、君は簡単にあの子達の下へといけるのに。
なのに――。
「じゃ、いこうぜ?確かさそろそろ健二兄ちゃんも帰ってくるよな?そしたら三人でまた人生ゲームしよう!」
差し出された温かなこの手を拒むなんて事、やっぱり私にはできないんだ。
小心ガール(……大地)
(ん?)
(ありがとう)
(?え、あ、うん。どういたしまして?)
100301 執筆
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