そこはとても暗い場所。そこにいるのは自分ともう一人の自分の片割れだけ。
「二人だけだねーユウヤ」
「……。」
ピョコピョコと動く猫耳をじっとみつめれば、ね?と小さく微笑まれる。
そんな君を私は無表情のまま静かに見つめ返す。
どうしてなんだろう。どうして、君はそんなに楽しそうに笑えるのだろう。
ここはこんなにも暗くて寒いのに。今にも、この私達という存在が消えてなくなりそうなのに。
ユウヤ――そう呼ばれる心地よさ。。
見つめられる私と同じ色のまんまるの瞳は静かに光り輝く青い月。
冷たいようで暖かい。何者をも包み込むその静かな温かさ。
自分とほとんど同時に生まれ出でた存在なのに、君はこんなにも暖かい。
「不思議だよね。ここはとても寒いはずなのに僕は全然寒くないんだよ」
「……何故?」
「ん?ユウヤが隣にいてくれるから、かな」
ぎゅ、と私の手を小さく包む手は小さく、大きすぎる私の手は半分以上はみだしている。
でも、それを包むかのように君はもう一方の手も使って私の片手をすっぽり覆った。
じんわりと伝わってくる私たちにはないはずの温もり。
――あぁ、アバターの私たちにもこんな温もりがあったのか。
ゆるゆると瞳を細めれば目の前の君は嬉しそうに笑う。
「えへへ、ユウヤ。あったかい?」
「……あぁ、とても」
伝わる温もりに素直に頷けば、目の前の君はまた、笑う。
暗いところに二人きり(でも、こんなにも暖かいと思えるのは)
(きっと君が隣にいてくれるおかげ)
100227 執筆
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