企画作品部屋 | ナノ
 光忠から私は蛍丸に甘え過ぎていることがあると指摘を受けてから数日。蛍丸本人に相談した結果、そのままでも平気だという返事が返ってきたので私の蛍丸に対する態度は特に変わることはなかった。蛍丸の方も私に対する態度は変わることがなく、むしろ前よりも積極的にくっついてくるようになったので最近はずっと頬が緩みっぱなしである。ショタっ子万歳。


「主、膝枕して」
「いいよ」


 縁側でのんびりとお茶を飲んでいる私の姿を見た蛍丸はどこか嬉しそうな表情を浮かべながらそう言ってきた。断る理由もないので許可すれば太腿に別の重力がかかる。落としたら危ないので湯呑をおぼんに置き、視線を下へとずらせばそこにあるのは気持ちよさそうな蛍丸の表情。帽子は邪魔だから取ったらしい、太陽の光を受けてキラキラと光る銀色の髪は春の風に合わせて微かに揺れた。


「急にどうしたの?」
「んー、なんとなく主に膝枕してもらいたくなって」


 翡翠の瞳を細めてにっこりと微笑むその姿はまさに天使以外の何物でもなく、私の顔はだらしなく緩んでしまう。あーもう可愛いなぁと緩んだ顔のまま頭を撫でれば聞こえてくるのは嬉しそうな声。大好きな蛍丸を膝枕してあげながらのんびりと過ごす。なんて有意義なひと時なんだろうと幸せをかみしめていると、廊下を走る音とともに廊下の曲がり角から清光がやってきた。


「主!」
「お、清光。おかえり」
「ただいま、主!」


 がばりと抱きついてきた清光を抱きしめ頭を撫でてやれば嬉しそうに表情を和らげる。


「今回の遠征で沢山資源取ってきたよ。後で資源部屋確認してきてね」
「うん、わかった。ありがとうね、清光」


 偉い偉いと撫で続ければ清光の機嫌は更によくなる。と、先ほど清光がやってきた廊下の方から数人の足音。ひょっこりと顔を覗かせたのは清光と一緒に遠征へと向かわせたメンバーだった。


「あー!ずるい!!ぼくもなでなでしてください!!」


 清光の姿を見るや否やずるいずるいと走ってきたのは今剣。それに続く様にして俺も僕もと短刀の子達が走り寄ってきて、私の周りは押し競饅頭状態になった。わあわあと一気に騒がしくなった縁側の音を聞きつけて何事かと他の刀剣達もやってくる。


「次は俺を撫でて!」
「だめです!まだぼくはまんぞくしてません!!」


 大人の刀剣達が苦笑を浮かべて事の様子を見守る中もそれは続く。僕だ俺だと私の手を引っ張りっこする様子を見ながら、私の手はおもちゃじゃないんだけどなーとつい考えてしまった。別に痛いわけではないからいいのだが。そろそろ止めるべきかと考え始めていたそんなときだった。


「ねえ、いい加減にしなよ。主が困ってるじゃん」


 鶴の一声ならぬ蛍の一声。騒ぎの中にも関わらず気にせず私の膝で寝転がっていた蛍丸がそう言えば加州はバッと蛍丸へと視線を向けた。


「そもそも、お前がずっと主を独占してるのがいけないんだろ!」
「なにそれ、別に俺主を独占してるつもりなんてないよ?」
「けど、いつも主がいるところにはお前がいるじゃんか!」
「そうですよ!ぼくだってあるじさまとあそびたいです!」


 これが俗にいう飛び火というものなのだろうか。あれよあれよという間に話題は逸れる。
 でも確かに加州がいう意見も一理ある。最近はずっと蛍丸に構いっぱなしで他の刀剣達と遊んでやることが少なくなってしまっていた。光忠が私にした話も、それを思っての事だったんだろう。気を付けようと思っていたのに見事にそれをやらかしてしまったようだ。


「近侍なんだからいるのは当たり前でしょ?」


 ね、と言いながらぎゅうと蛍丸は私に抱きつく。それに対して聞こえる加州の叫び。きっと楽しんでやっているな。


「俺は主の近侍なんだから、ずっと傍にいて主を助けるのが仕事なんだよ。だから、俺が主といつも一緒にいるのは当然のこと」


 「それに主、俺の事大好きだもんねー」なんて甘えた声に、状況が状況にも関わらず私の顔は緩む。あぁ、本当に私は蛍丸に弱い。ついつい頭を撫でるために伸ばしてしまった手にすり寄りながら蛍丸が浮かべるのは勝利の表情。困ったように私たちの光景を見る光忠には後でお説教をされるんだろうなと思いつつも、もっと撫でてとおねだりしてくる蛍丸の言うことを素直に聞き入れてしまう私はきっと、もう後戻りできないところまで蛍丸にはまってしまっているのだろう。




はまった時点で負けな話


150509 執筆


のの様、リクエストありがとうございました
− 10/10 −

目次
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -