複数ジャンル短編 | ナノ
※原作破壊
※MHのモンスターが出てきます
上記大丈夫な方は下へスクロール











広場の真ん中からズルリと這い出してきた多くの敵を前に、相澤が大きな声で指示を出した。
「一塊になって動くな」と「13号、生徒を守れ」。二つの指示を出した相澤がゴーグルをして個性発動のために目を隠す。緑谷はそのまま相澤のみが戦闘に出るかと思ったその時、近くの倒壊ゾーンから獣の咆哮が響いた。


「え!?」
「い、今のなに!?」
「獣の叫び声みたいだったよな」
「お前ら、落ち着け」


突然の声に慌てているのは生徒たちだけではない、広間に姿を現した敵の頭と思わしき二人もその声を聞き表情を変えた。


「おい、黒霧。今のなんだ」
「わ、わかりません」


敵味方共に状況が把握できていない中、再度大きな咆哮が響き大きな黒い影がそこから飛び出した。
犬を模した巨大な体。逆立った青と金の体毛に電気を纏わせ、頭から二本の立派な角を生やした獣。それが相澤達と敵の間に降り立った。


「ウォオオオオオオオオン!!」


咆哮と共にバリバリッと大量の放電があたりへと散る。それに当たった敵はほとんどが気絶した。辛うじて気絶を免れた者も瞬時に距離を詰めてきた獣の大きな尻尾に潰されたり、吹っ飛ばされる。まさに圧倒的な強さ。
ほとんどの敵を動けなくした獣はその瞳を今度は死柄木へと向けた。


「おいおい、なんだよあのチート野郎」
「おそらく教師の一人だと思いますが、我々の持っているデータにはありません」


ひとまず撤退を、と黒霧が提案しようとした次の瞬間、二人の前に獣の爪が迫った。紙一重でかわした死柄木と黒霧を今度は尻尾が追撃し、最後のとどめとばかりに電撃が襲う。


「おい!黒霧!いったん退くぞ!」
「いいのですか?」
「よくないけど、これじゃ脳無を呼ぶ暇すらない。体制を立て直す」
「わかりました」


言うが早いが黒霧がワープを使い、二人の姿は黒い霧の向こうへと消えた。逃がさないとばかりに獣が更に電撃を向けるが、それはあと一歩のところで届かずに終わる。


「お、終わった、のか?」
「いや、おそらくまだだ」


切島の言葉に相澤が応え、動こうとした生徒たちの動きを手で制した。その彼らの瞳の先で、獣は低く唸りながらそれぞれのゾーンへと一度ずつ顔を向け、不機嫌そうに喉を震わせた。


「多分、最初に出てきた時、それぞれのゾーンに敵を配置したんだろう。そいつらがまだ残っているようだ」
「な、なんでそんな事わかるんですか?」


緑谷の問いに相澤が指さすのは広場にいる獣。その体からはバリバリと電気が放電されている。


「あいつの機嫌が直っていないのが証拠だ。あいつは自分のテリトリーに他人がいるのをひどく嫌がるからな」


「え?じゃぁ俺たちも危ないんじゃない?」とA組の心が一つになったとき、獣が一際大きな咆哮を発した。見ればその姿がまるで粘土でもこねるようにぐにゃりと歪み、変化していく。それは正直直視するにはきつい光景。何人かが耐えきれずに目を逸らしていく中、獣の姿はまったく別のものへと変わっていた。


「グォオオオオオオ!!」


そこにいるのは一匹の飛竜。緑の鱗に覆われた体、鋭い牙と爪、棘のついた大きな翼と長い尻尾。口から少量の炎をふきながら竜はその翼を羽ばたかせて空へと舞い上がる。

そしてそのまま空中で一回りすると、手始めとばかりに土砂ゾーンへと飛んでいった。


「相澤先生、今日の授業どうします?」
「中止だな。敵の襲撃もあるが、何よりあの様子だと全ゾーンやられるだろう」


遠くから竜の咆哮と微かに聞こえてくる悲鳴らしき声を聞きながら、相澤はかけていたゴーグルを外した。
その後、相澤が言った通り授業は中止となり、通報を受けた警察によって全ゾーンから気絶や多少の傷を負った敵らしきものが発見された。勿論、USJの全ゾーンがことごとく破壊されており、その光景を見つめる13号の背中は悲しげだったと後にA組の生徒は語った。




USJの獣

※文中に出たMHモンスター名:ジンオウガ、リオレイア
190323 執筆


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