「リィイイイイイフ!!!」
「んあ?…おぶっ!!」
ナマエの行動はいつも唐突だ。いきなり名前を呼んだかと思えば俺の事を藪から棒に罵倒してきたり。可愛い女の子を口説いていればいきなりデパートに行きたいなどと言って連れまわしたり。今日だってそうだ。普通に道を歩いていればいきなり俺にタックルをかましてきやがった。
「〜〜〜ってぇなこの野郎!なんだよいきなり!!」
「べ、べべべ、別に!?あああああああんたを見かけたから抱き付いたとかそんなのじゃないし!ただあんたのその顔にイラッときたからタックルしただけよ!!」
「はぁ!?なんだそれ!」
目の前で顔を真っ赤にしながらあわあわと発言するナマエ。地面に思いっきり強打した頭をさすりながら体を起こせばナマエは俺から体を離す。
せっかく着てきた服は彼女のせいで砂だらけとなり、整えた髪もぐしゃぐしゃ。今日はなんだかいい日な気がしてならなかったのに、こいつのせいでめちゃくちゃだ。
「ふ、ふん!いいいいザマじゃない!!あんたはその格好がお似合いよバーカ!」
「んだとぉ!手前がいきなりタックルしてきたのが悪いんだろうが!!いつもいつも唐突な行動しやがって!そのたびに俺がどんなに迷惑してるかわからねぇのか!!」
「っ…そ、そんなの、知らない、わよ…」
謝罪の一つも言わない事にカッとなり怒鳴ればナマエはさっきまでの威勢はどこえやら、シュン…となり特徴的な短髪を指でいじり始める。そんな彼女に大きなため息を一つ零し、できるだけ服の砂を落とす。まぁ、今日はタックルされたのが道端だったのが不幸中の幸いだった。前のように泥の前だったりとか池の前だったりしたら、泥だらけかびしょぬれで一度家に戻らなければならなかっただろう。
「はぁ…まぁいいや。気はこれで済んだか?俺はもう行く」
今日はファイアに隣町に来いと言われている。時間に五月蝿いアイツの事だ一秒でも遅れればただでは済まない。軽ければカメックスのハイドロポンプ、重ければリザードンのかえんほうしゃだろうか。どちらにしろどっちも嫌だが。
踵を返し歩き去ろうとすればまた腰に響く衝撃。こいつは…どんだけタックルすれば気が済むんだ。
「〜〜おまえな…なんでこう何度も何度も…」
「ううううううう五月蝿いわよ!ああああああんたが私に背を向けたのが悪いのよ!!」
「…はぁ…もう怒る気もしねーわ」
腰にひっつきむしのようにひっつく彼女を無理矢理はがせば未だに顔を真っ赤にさせたままだった。
コイツ赤面症だったっけか?
首をひねりながらとりあえず軽く頭をポンポンと撫でてやる。はたかれるかと思いきや、彼女は顔を真っ赤にさせたままじっと動かない。その表情が微かだが嬉しそうに見えるのは俺の見間違いなのだろうか。
「今度こそ気がすんだよな?じゃぁ、俺はもう行くから」
「っ…あ……」
頭から手を離し少し足早に歩き出した。さっきまで余裕だった時間も今は彼女に会った事によっておしている。
いそがねーとファイアに何をされるか…これはもう、想像もしたくない。
もういっそのことピジョットでも出そうかと考えながら歩き続けていれば、後ろから少し裏返った声でナマエが俺の名前を呼んだ。無視するのもありだとは思ったが、それは長年の癖でできなかった。
「だから、なんだっていって…おぶっ!!」
振り返った途端に真っ黒に染まる視界。それと共に脳へと伝わる衝撃に顔を手で押さえ俯けば何かが地面へと堕ちる音がした。
「〜〜〜っ…」
「そそそれ、前間違って買ったのよ!いらないから、あんたにあげるわバカリーフ!」
「じゃぁね!」と声が聞こえ駆け足で去ってゆく音。そんな彼女の表情を痛みに呻く俺は見ることはできず。暫くその場にうずくまり痛みに耐え、ようやくひいてきたので顔から手を離せば地面に転がったある物が目に入った。
自分の為に買ったのならばまずするでないだろう綺麗な緑の包装紙に包まれ、綺麗な赤いリボンで飾りつけされたソレ。リボンの間に挟まっていた紙を開けば御世辞にもきれいとは言えない字で描かれた数文字。それを読む俺の口角は無意識のうちに上がっていた。
「ったく、素直じゃねーんだから」
去り際に小さく聞こえた声。俺の聞き間違えじゃなければと思うほどに俺の頬は緩んでいった。
ツンデレなりの祝い方(「お誕生日おめでとう、リーフ」)
101123 執筆
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