複数ジャンル短編 | ナノ
土臭い洞窟の奥。じっと自分の手を見つめ何かを考えているらしい彼は近づく私には気がついていないようだった。


「プレイボール!…せいっ」
「いてっ!」


ぽこん、と良い音を響かせ当たったのは広いおでこだった。彼の足元にコロコロと転がったそれを彼は眉をひそめながら持ち上げ、此方をジトっとみつめた。
おお、怖い怖い。眉間の皺が半端ないです。


「痛いじゃないかナマエ」
「私に気がつかないチェレンが悪いんだよ。油断は最大の敵ってね」
「それと、モンスターボールは人を捕まえるために作られたモノじゃないから。ちゃんと正しく使いなって」
「今そのボールはただのボールだと私が決めたからいいの。モンスターボールはポケモンを捕まえるボール…でもね、」


そう言ってポンっと相棒のサザンドラを出してニッと彼に笑いかける。


「ボールはなんにでも投げていい、使い道ありまくりの便利な道具」


そう、なんにでも投げていい。ポケモンでも、人にでもね。

そう付け足せば彼は大きくため息をついて、そのボールを私へと投げ返した。キャッチボールのごとく上手に受け取り、ボールホルダーへと戻せば彼の目の前には一匹のポケモン。


「お?やる?」
「もちろん、ナマエだってその為にここに来たんでしょ?」
「おんやぁ、バレテたか」
「当たり前。僕はその為にここにいるんだから」
「へへ、いいね。ゾクゾクするよ」


自然と上がってゆく口角。強く鼓動を打つ心臓。それを隣の相棒も感じているのか嬉しそうに喉を震わせた。それはあっちも同じ。眼鏡の奥の少し鋭い瞳がギラギラと輝きを増している。


「ねぇ、チェレン。ただバトルするだけじゃつまらないから、賭けをしない?」
「…いいよ。でもお金とかは却下だ」
「そんなのもういらないくらいに集まっているからいらないよ。…負けた方が勝った方の言う事を聞く、どう?簡単でしょ?」
「まぁそれならいいよ。ただし、その人が出来る範囲でね」
「オーケー。それじゃぁ始めようか」


きゅっと知り合いから譲り受けた帽子をかぶり直しゆっくりと彼を見据える。
そして、二人の呼吸が合わさったその瞬間…。

勝負の火ぶたが切って落とされた。





引きこもりボーイ
(へへ、勝負は勝負だからね〜♪)
(くそ…わかったよ。で、何を聞けばいいの?)
(私と一緒に、一回家に帰ろう)
(…へ?)
(いやぁ、トウヤとトウコ、それにベルにチェレンのお母さんに頼まれちゃってさ〜)

(チェレンを連れて帰れるのはきっと貴方だけだからお願い、って)
(なっ〜〜〜〜!!)

101206 執筆


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