複数ジャンル短編 | ナノ
殺し名第三位…零崎一族 俺はその一族の1人。零崎名は零崎○○、前はミョウジナマエという名前だった。でも今はそんなことはあまり気にならない。だが、俺はこの一族が嫌いだ。殺人衝動で繋がってる家族なんか、家族じゃないと思っている。

俺が零崎になったのはある放課後の出来事が原因。零崎に目覚めた後は双識というヘンタ……男性に出会い、零崎一族に入った。最初は零崎名は伏せて前の名で通していたけど、二つの名前を振り分けるのは大変だったので今はもう零崎名一つで通している。


だが、今はそんな事を悠長に語っている状態ではない。 客観的に言うとそう、絶体絶命という言葉が一番合うだろう。
確かに俺は今絶体絶命だ…今話題殺到中の指名手配犯、そして俺の(一応)兄にあたる殺人鬼――零崎人織に出くわしているのだから。




△ ▼ △





後ろの人物――人織はサングラス越しにこっちの様子を伺っている。
俺は気づいていないふりをして人織の前を歩いている。
つまり、世間で言う尾行だ…。だが、普通の尾行じゃない、命がかかっている尾行だ。 恐らく人織は俺が人気のない場所に入ればすぐさま襲ってくるだろう。殺る気十分の殺気を先ほどから背後に感じる。


「ここはこっちから仕掛けるか…」


小さく呟き、俺はいつも常備しているナイフをスカートの裾から引き抜く。

俺はこう見えても裏では結構有名、らしい。俺はそういうのに疎いのでよく分からない。


≪四重奏(カルテット)≫


それが俺の通り名。本当は俺の持っている長鎌の名前だが、いつの間にか俺の通り名になっていた。ある意味呆れる。人はなんにでも名前を付けないと落ち着かないのだろうか。
でも今はそんな風に世間を批判している場合じゃない。世間批判は後でゆっくりと…。

軽く深呼吸し俺はいきなり走り出す。そして、近くの路地裏に駆け込んだ。流石にこれには人織も驚きが隠せなかったらしい。一瞬キョトンとした表情になったが、流石殺し屋と言ったところか…すぐに我を取り戻し、追いかけてきた。




△ ▼ △





入ってきたとたんに俺は忍ばせていたナイフを四本人織に向かって投げる。人織はそれを紙一重でかわし、ニヤリと薄く笑うと一気に至近距離へと踏み込んできた。うーわー、黒い笑顔ー。
そして、その勢いで袖からナイフを一本出し、俺の心臓に向かって真っ直ぐに突く。俺は後方に飛んでその突きをかわす。 両者共に一定の距離をとり睨み合う。どちらかが踏み込むまでその睨み合いは続く。先に動いたのは…俺の方だった。


一歩で人織の懐に入り足払いをかける。バランスを崩した人織は受け身をとり、そのまま逆に俺に足払いをかけた。 俺は危うく倒れそうになり、バランスをとろうと片手倒立で空中に飛び上がる。そして、人織にそのままドロップキックをくらわせた。
これは入ったらしく人織は少しよろけ、俺はその隙をついて続けてかかと落としを落とす。だが、人織はそれを右に転がることで避けそのまま俺にもう一度足払いをかけた。 これには俺も受け身がとれず固いコンクリートに仰向けに倒れる。その上に人織は馬乗りになり心臓の上でナイフを止めた。

人織の首否ちょうど頸動脈のところには俺のナイフが当てられている。
両者共一向に動かず、張り詰めた空気が辺りを支配した。


と、人織はニヤリと笑いナイフを袖にしまう。どうやら、もう殺す気はないようだ。それによって俺もナイフをしまった。
だが、体制は変わらず俺の上には人織が馬乗りになっている。これはさっきと違う意味で危ないのではないかと俺が考え始めた頃、人織が口を開いた。


「お前…何者だ?俺の攻撃を避けたのはあいつ以外では初めてだ」
「ミョウジナマエ…まぁ、今は零崎○○で通してるけど」


平然と答えれば、まじか?と人織がかすかに目を見開く。


「お前…いつ一族に入った?」
「半年前。双織兄に会って、それで…。初めて人を殺したのは五歳の時」
「そっか、お前が兄貴たちが言ってた新しい兄弟か」


へぇ、と言って俺のことを改めてまじまじと見つめる人織。そろそろ退いてはくれないのかと、イライラしてきた俺。


「わかったなら、退いてくれない…」
「へ?あぁ、すまねぇな。…ある意味美味しいシチュエーションだと思ったんだがな」


俺の上から退きながら人織はぽつりとつぶやく。偶然それを聞いた俺の顔からは一瞬血の気が引いた。


「さらっと問題発言をするな、気持ち悪い。零崎一族の人間は大半が殺人のことしか頭にないと思っていたのに…」
「はぁ?46時中殺人のこと考えてたら変態みたいじゃんか」
「さっきの発言は十分変態だと俺は思うんだが」
「かははっ、あれは健全な青年は誰もが一回は言うぞ」


真面目に答えてから人織は微笑む。俺もそれにつられて、小さく微笑んだ。




△ ▼ △





零崎一族…俺はこの一族が最初はとても嫌いだった。だが今は、こんな風に笑いあえる兄弟がいるならいいかな…と思い始めている。




四重奏
(おぉ!○○ちゃんお帰り!お兄ちゃんは心配したよ、いきなりいなくなるんだから!さぁ、お兄ちゃんの胸に飛び込んでおいで!)
(うお!寄るなクソ兄貴!!)
(…やっぱり、嫌いだ。零崎なんて…)

091117 修正


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