複数ジャンル短編 | ナノ
兄弟とは全てが似ていないとされていても結局はどこかしらが似ているものだ。たとえばそう…ちょっと照れくさそうに笑う仕草とか。バトルの時に見せる真剣な瞳とか。意外と本人が気が付いていないところが似ていたりしている。


「性格は全く似ていないけどね」
「何それ、喧嘩売ってんの?全力で買うよ?」
「遠慮します」


思わず数p後ずさればぎろりと睨まれた。


「というか、俺の性格が兄ちゃんに似てようが似てまいが俺には関係ない事だし。どーでもいいことだよ」


ふてくされたようにボソリと呟いた彼の髪が風に撫ぜられ揺れる。それが綺麗だな、なんて思ってほうと一息。腕の中に抱いたピチューがそんな私の頬をペチペチと叩く。
改めて地面に直接胡坐をかく彼の横に座れば彼は少し私を見た後また視線を戻してしまう。目の前に広がるのは夕陽色に染まる町。始まりはまっさら白色、それにちなみマサラタウンと名付けられた私達の故郷は夕陽の光を受けオレンジに輝く。


「ナマエはさ…」


そのまま私が無言でいれば彼はチラリと私に視線を向け問うてきた。頷く代わりに彼へと視線を向ければ、町と同じように夕陽色に染まった彼が見える。
いつもは明るい茶色の髪は眼が覚めるような鮮やかなオレンジに。彼の兄であるレッドさんと同じ赤い瞳は燃えるような紅蓮の色に。引き込まれるようなその光景に思わず見とれれば「おい」と少し不機嫌そうな声が意識を引きもどした。


「え、あ、ご、ごめん。もう一回言って?」
「……。だから、」


――ナマエはこんな俺の性格、嫌い?


早口にまくしたてるように言いきった後、彼はふいっと顔をそらしてしまう。少し強い口調で言ってきたわりにはそのそらされた耳が赤いのは夕陽のせいだけではないだろう。
ああ可愛いな、なんて口には決して出さず口元を歪めるだけに押しとどめ私はゆっくりと彼の手に自分の手を重ねた。びくりと大げさな程に揺れる彼の体を見て思わず噴き出せば軽く睨まれる。でもそんなの今の私には効かなくて、ゆっくりと彼の肩に擦り寄るようにして小さく呟いてあげれば、彼はやっぱり少し不機嫌そうながらも内心の喜びを隠せない様子で私の手に自分の指を絡ませた。
そんな私達を彼のピカチュウと私のピチューが微笑ましげに眺め、お互いに笑い合った事など私達は知る由もない。




君は何者とも比べられないよ
(それはきっと、惚れた弱み)

110228 執筆


ファイアを愛でる為に作った二次創作絵文合同企画サイトにて掲載していたもの。

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