複数ジャンル短編 | ナノ
「人はね…死んだら雲の上にいくんだって」



そう言って微笑んだ彼女。優しくて、暖かい、陽だまりのような微笑だった。




―――
――





春を告げる鳥が上空を飛んでく。雲ひとつない空に、ひとつだけある小さな影。俺はそれを静かに見つめていた。

何を考えたいわけでもなく、何もしたいわけでもない。ただ、一人になりたかった。




「ナマエ…」




ポツリとこぼす彼女の名前。

俺の唯一の理解者であり、俺の一番大切で、一番愛しかった人。でも彼女はもうここにはいない。あの優しい微笑みも、暖かい温もりも…すべて、ない。すべてはあの事故で消えてしまった。俺の目の前で…彼女は死んだ。

ふと、綺麗な青空に手を伸ばす。
触れられないとわかっていても、手を精一杯伸ばす。

この手が、君に届いたらいいのに。
この声が、君に届いたらいいのに。




「ナマエ…」




あの時、お前を守れなくてごめんな。助けられなくて、ごめんな。


「綱吉」


微笑む彼女の姿、綺麗なソプラノの声。今でも鮮明に思い出せる。




「ナマエ、俺強くなるよ。もう、あんなことなんか繰り返さない。強く、強くなってみんなを守るんだ。だから…」




ずっと、俺のことを見守っていてね。



今はいない君との約束
(勿論だよ、綱吉)

End

091117 修正


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