複数ジャンル短編 | ナノ
「ボス、この書類もお願いします」


机の上にたまった書類。私はその上にまた書類を乗せた。その書類を見てボスは溜め息をつく。


「まだまだ、休めそうにないね」
「仕方ないですよ。明日はボスと京子様の結婚式で一日中潰れるんですから」


そう言うと複雑な顔をするボス、もといドン・ボンゴレ沢田綱吉。




△ ▼ △





沢田綱吉…通称ツナはマフィアのボス。

中学の頃ダメツナと称され落ちこぼれていた彼は、いつしか友が出来仲間ができ、強く逞しくなった。隣で見ていた私でもわかるほどの変わりようだった。

私と綱吉は只のご近所さん。特に会話もせず、顔を合わせても会釈をするだけ、まさに赤の他人。


だがある夜、マフィアの戦いに巻き込まれてしまった時を境に平行を保っていた私と綱吉の距離は急激に近づいた。
そして次第に私達はともに引かれあい、恋に落ちた。私も綱吉も一緒にいるだけでとても幸せだった、だけどその幸せは婚約者という存在によって簡単に崩れ落ちた。

マフィアとは常に狩り狩られの世界。相手に狩られぬようにするには自分たちの情報は決して知られてはならない。それは常識中の常識。

その婚約者は綱吉達の情報を使い結婚を申し込んできた。聞き入れなければこの情報を流す、そう脅迫して…。
だから、私は自ら身を引いて綱吉を婚約者へ受け渡した。みんなを、綱吉を危険な目にあわせないように。




△ ▼ △





そして、綱吉は明日その婚約者・京子との結婚式を控えている。


「本当はナマエと式をあげたかったんだけどな…」


綱吉は小さく呟き私のいるソファーへと腰を下ろす。


「ボス、そんな事を言ってはいけません。貴方はマフィアのボス、ボスはファミリーを守る義務があるでしょう?」
「……綱吉」
「へ?」
「二人きりのときは『綱吉』」


拗ねたように瞳を伏せるボス――綱吉。私は苦笑しながら綱吉を見つめる。
そんな私を見て綱吉は今にも泣きそうな顔をし、私にすり寄ってくる。まるで、私の温もりを名残惜しむかのように。私はそんな綱吉の頭を優しくなでた。

可哀想な人…好きでもない人と結ばれるなんて。でもそれは仕方のないこと、貴方は…ボンゴレファミリーのボスなのだから。貴方はマフィアのボス、私はただの幹部でしかない。
神様、私はアナタを恨みます。何故私と綱吉を出会わせたのですか。こんなに彼が苦しむことを知っていながら、何故私達を出会わせたのですか。どうして、何故なのですか…神様。これが、これがアナタの決めたことなら私は…。


「ねぇ綱吉…駆け落ち、しちゃおっか…?」


私は…最後までそれに抗います。





神に牙を貴方に微笑を…
(貴方とならどこへでも行けるから)
091117 修正


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