ミョウジ正一、通称正ちゃんは私の兄。私達は正真正銘の兄弟…そう他界した両親が言っていた。でも私達はまったく似ていない。
漆黒の髪にブラウンの瞳、チャームポイントとなるものがまったくなく、目立たない私。
それとは反対に、個性的な丸めがね、明るい茶色の髪。そして顔がかっこいい正ちゃん。
比べるまでもなく、似ていない私たち。友達もおらず何時も一人でいる私とは違い、正ちゃんには沢山の友達がいる。学校には隠れファンがいるくらいだ。
それだけ私の兄は格好いい。そして、私はそんな兄が好き。
たとえ、絶対に血が繋がっていない、どうせ義兄弟だとからからわれても、私は正ちゃんが好き。
だって正ちゃんはいつも私がいじめられてると駆けつけてきて、「ナマエをいじめるな!」と言って守ってくれるから。
難しくて解けない問題を優しく教えてくれて、それができたら「ナマエは凄いね」って誉めてくれるから。
大好きな兄、頼りになる兄、尊敬している兄。
だから、私は正ちゃんが本当は兄弟じゃないってわかっていても好き。本当はミョウジ正一じゃなくて入江正一だってわかっていても私は正ちゃんが好き。どんな秘密があったって、私は正ちゃんを尊敬しているし、本当の兄だと思ってる。
でも…。
「どうして?正ちゃん…」
どうして?どうしてそんなものを持っているの?
どうして――その≪拳銃≫を私に向けているの?
「ごめんナマエ。君を殺さないと、僕は百蘭さんに怒られてしまう。君が生きていると、僕等のファミリーの存在が危うくなるんだ。だから…」
そう言って悲しい顔をしながら引き金に指を添える正ちゃん。黒光りするその銃口は真っ直ぐ私に向いていて。佇む私たち周りには鮮血の花が咲き乱れ私達を囲んでいる。それは今まで正ちゃんと一緒に居た人たちのもの。
正ちゃんの…友達のもの。
△ ▼ △
あぁ…そっか、正ちゃんは殺し屋関係の人なんだね。だって、そうでなきゃこんなに簡単に人を殺せないもの。そして、私は正ちゃん達の(正ちゃんがいう)ファミリーって人達から見てとても邪魔な存在なんだ。
わかった…わかったよ。私と正ちゃんは敵同士なんだね。
今頃になって私は全てを理解した。そして、理解した上で自分の義理の兄に微笑みかける。最後の別れは笑顔でしたいから。
「正ちゃん…今までたくさん勉強教えてくれてありがとね。とっても楽しかったよ」
「ナマエ…うん。僕もナマエと過した日々はとても楽しかった」
私は満面の笑みを、正ちゃんは優しい微笑を。互いに笑いあい、そして…正ちゃんは静かに引き金を引いた。
大きな銃声が鳴り響く。
跳ね上がる身体、倒れる浮遊感、かすれゆく視界の隅には…泣きながら拳銃を構えている正ちゃんの姿があった。
私、笑ってる正ちゃんは好き、だけど泣いてる正ちゃんは嫌いだよ。だから…笑って、私の分まで。幸せに生きて、私の分まで。ね?正…兄ちゃん。
泣き顔より笑顔を…(最後に貴方の笑顔をもう一度…)100704 修正
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