複数ジャンル短編 | ナノ
※覇気の力もちガチチート主
※原作破壊、救済展開
※知識はアニメからのみなので間違いもあるかもしれない
※エースの事、嫌いじゃないです、むしろ好きです
※かなりグダグダ展開












「エースを救えええええ!!」


いたるところから上がる雄たけび、そして、激しい戦闘音。それを加速させるように途中から参戦したルフィ達によって、戦闘は更に白熱したものとなっていた。
そんな中、不意に誰かが水の音を聞く。ぴちゃり、ぴちゃり、と静かに水面を渡る音。その音は静かに、ゆっくりと、けれど確かな足取りで決戦が行われている場所へと向かっていた。
皆目の前に映る海兵や海軍大将、そして処刑台のエースに視線を向ける。
けれど、ただ一人。その処刑台に座るエースはその二つの眼でしっかりと見ていた。
白ひげ達が入ってきた海の方から、小さな影が一人海面を渡りながら此方へ歩いてくるのを。
ふわりと風にはためく風よけの上着。忘れもしない顔。一見すればなんの力もないと思えるその平凡な姿。けれど、海の上をまるで土でできた道のようにのんびりと歩く姿が、異様さをかもしだしていた。


「ナマエ」


ぽつり、と零れた名はセンゴクとガープの耳には届かないほどに小さかった。


「エース!今行くぞぉおおお!!」


盃をかわした弟の叫びさえ、今のエースの耳には小さく聞こえた。彼の瞳と意識はただ一点、丁度海面から凍った陸地へと足を乗せた彼女へと向けられていたから。


「エース!」


ルフィのやる気に満ちた声でも、白ひげの威厳に満ちた声でもない、それでもその場の全員の耳にその声は通った。凛とした、高くもなく、低くもない中性的な声。しかし、どこか怒りが含まれた声。


「だ、誰だ?」
「どこから来たんだ?」


海兵どころか海賊たちでさえも首をかしげる。誰も彼女の事は知らない。勿論、海軍大将すらも不思議そうに見つめる。それもそうだろう、彼女はこの海で一度も名を上げる行為はしていない。
けれど、白ひげ海賊団のクルーとエースだけは知っている。彼女の存在も、彼女の恐ろしさも。


「そこで、何をしてるのかな?エース」


にっこり、と場に似合わぬ笑みを浮かべ、ナマエは問う。処刑台で今にも死ぬという状態の彼に向かって、まるで普通の会話のように問いかける。


「え、と…処刑されそうに、なってます…」


彼の口から零れたのは、さっきまでルフィに向かい「迷惑だ」と必死に言い放った男とは思えないほどにしりすぼみした声だった。ひくっと口元がひきつり、極力視線を合わせないようにしたいというように顔をそらそうとするけれど、まっすぐにエースを見つめるナマエのその眼力がそれを許さなかった。


「グラララ、やっぱり来たか」
「そりゃそうだろい。しかもあいつ、絶対怒ってるぜ」


苦笑いする白ひげとため息つくマルコ。彼女の恐ろしさを知る白ひげ海賊団のクルーたちは我先にと彼女の前からさりげなく退いていった。それでも、何も知らない傘下の海賊、海兵が立つ道を、ただまっすぐにナマエは歩き出す。


「へぇ、私の言いつけも守れずに処刑されそうになってるんだ」


一歩、踏み出した彼女の背後で海兵が刀を振るった。しかし、その一刀は当たり前のようにかわされ、くるりと回った勢いのまま繰り出された蹴りで海兵は地に沈む。


「私は言ったよね。エース」


また一人、進む道をふさぐ海兵を地に沈めながらナマエは言う。


「死ぬ気で、ティーチさんを探してこい。見つけたら即座に連絡しろ、って」


一斉に向かってきた数十人の海兵が彼女の体に刃を、銃弾を、届かせる前に地に沈む。


「なのに、お前はティーチさんを見つけたにも関わらず、連絡もせずに逆につかまってる」


海軍大将の一人、青キジがその冷たい手を向けるが、それすらも届かない。彼女の間近で遮られた氷は地に落ちる。武装色の覇気、と誰かが呟いた。


「ねえ、エース。流石の優しい私でも、流石に…怒るよ?」


次の瞬間、海賊、海兵関係なく、意志の弱い者全てが地に倒れた。
覇王色の覇気。一部の人間が持つ特別な力、それを最大限まで鍛え上げられたものを浴びては仕方がない。残るのは一部の海賊と海軍大将達のみ。
進みやすくなった道をすたすたと進むナマエの瞳は依然エースをとらえ続けていた。その視界に赤犬が飛び出す。


「調子に乗るなよ、小娘!」
「今私はエースだけにしか用事がない、外野は引っ込んでろ」


目にもとまらぬ速さで繰り出された蹴りがロギアであるはずの赤犬をとらえ、壁に叩きつけた。周りも、本人すらも何が起きたかわからずに言葉がでない中、彼女は軽く壁や瓦礫を足場に跳躍し、一気に処刑台の上へと降り立った。
エースの隣にいるセンゴクなど目にも入らぬと言った表情で、エースを見下ろす瞳は冷たい色を放っている。


「なんなら、処刑なんて待たずに、私がこの場で殺してやろうか」
「…っ」


誰もが助けに行ったとばかりに思う中発せられた彼女の言葉に、ルフィ達は目を見開いて止めていた足を再度動かした。
冷たい瞳で見降ろされたエースは、すべてをあきらめたように目を伏せた。彼女は冗談を嫌う人間。その言葉は大体が実際に実行されている。そんな彼女が自分を殺すと言った。ならば、本当にそれをするつもりなんだろう。


「ルフィ…みんな…こんな俺を、愛してくれて、ありがぶへっ」
「なにかっこよくセリフ決めて本気で死のうとしてるのかな?エース」


平らなスニーカーの靴底がエースの顔面を踏み、感動の言葉は最後まで紡がれることはなかった。ぐりぐりと整った顔を数度踏んでから足を離し、ナマエは笑う。


「私の約束一つ守れずに死のうとしてんじゃねえぞ、ゴラ」
「ず、ずみばぜん」
「捕まって死んでる暇があるなら、さっさとティーチさん探す旅の続きしてこい」
「い、いやでも…俺今捕まって…」


ジャラリ、と手錠の鎖を鳴らし、捕まってますアピールをすれば、さっきまで顔を踏んでいた足の踵が手錠を踏み砕いた。
唖然とする一同など意にも介さずに、ナマエはエースの頭をわしづかんで顔を上げさせる。


「これで自由だよね?エース。そしたら、やることはわかってるよね?」


その言葉の裏に隠されるのは、間違った答え言ったら殺すぞ、という無言の圧力。


「テ、ティーチを探し出して即座にナマエに知らせる!!死んでも知らせる!」
「うんうん、よくわかってるじゃないか。あと、ティーチさんを呼び捨てにするな。次呼び捨てしたらマジで殺す」
「すいません!!」
「よし」


なら、と上から振り下ろされるセンゴクの拳を武装色の覇気で弾き飛ばし、ナマエは地面へと足を叩きつけた。その一撃はまるでウエハースでも踏みつぶすかのように処刑台を破壊する。あたりから驚きの叫びが上がる中、ナマエはエースをまるで子供のように小脇に抱えたまま来た道を戻っていく。エースの背がでかい分、足が地面につき引きずられているが、そんな事を言えば命がないことを知っているエースはされるがままだ。
勿論、その間に海軍大将の妨害があったが、彼らの攻撃は一切彼女に届くことはない、ことごとく地に沈められるだけだった。そのままエースを白ひげへと渡したナマエは、まるで何事もなかったかのように戦場を去っていった。
去り際「知らせなかったらお前らの船全部海に沈めるから」とルフィのように輝く笑顔を見せながら、死神のような言葉を残して。

その後、この戦争での行為により、ナマエへ懸賞金がかけられ、その額がルーキー達に並ぶほどに高額なものになったのは言うまでもない。




ティーチ厨の頂上決戦
190111 執筆

※エースの事、嫌いじゃないです。好きです(大切なことなので二回書きました)

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