複数ジャンル短編 | ナノ
弟の見張りもかねてやってきたI・アイランド。それがまさかこんな事態に巻き込まれるとは夢にも思わなかった。目の前で拘束され手も足も出ないヒーロー達。他の人たちも怯えた表情で敵の指示に従っている。
普通の人ならばそういう反応をするんだろう。けれど、常に弟とドンパチしていた私にとって、これくらいの威嚇などなんともない。むしろ、相手が自分たちが有利に立っているという顔が気に食わない。


「まだだめだ、ナマエ少女。きっと緑谷少年たちが警備を回復してくれる。それまでは耐えるんだ」


シュウウ…と私の手から上がった煙にいち早く気が付いたオールマイトが小声で言ってきた。感情が昂るとどうしても個性が漏れ出してしまうのを知っている彼。確かにオールマイトのいうようにこの状態で私が暴れても現状は逆に悪くなってしまうだろう。


「わかってますよ、オールマイト…」


そう答えはするが、眉間による皺までは制御できない。「般若みたいな顔になってるぞ…ナマエ少女…」とオールマイトからコメントがきているが、今は無視した。
外ではきっと勝己達が制御装置を直すために傷つきながらも前に進んでいるんだろう。できることなら私も加勢に行きたい。ここで何もできずにじっとしているのはもう耐えられなかった。
ぐっと自分の手を握りしめ、改めて目の前で武器をもつ敵を睨みつけた、その時だった…。
ガラガラと大きな音を立ててさっきまで閉まっていた防護扉が開かれる。そして瞬時に解かれるプロヒーローたちの拘束。きっと勝己達がやってくれたんだろう。まだ現状が把握できずに慌てる敵達と動き始めるプロヒーロー。後ろにいるオールマイトの拘束が解けているのも確認して、私は手から爆発を出して敵へと突進していった。


「なっ、ナマエ少女!」
「早く勝己達のところに行ってあげてください、オールマイト!ここは平気ですから!」


着地と同時に一人の敵の頭をそのまま地面に叩きつける。「なんだ貴様!」と近くの敵からの悲鳴と武器を構える音がする。押さえつけた頭を軽く爆発して勢いをつけて武器を蹴り飛ばせば、相手が息をのむ音と怯えた表情がひらりと舞ったドレスの隙間から見えた。


「随分と長いこと我慢させられて、こちとら限界なんですよ。勝己達の加勢にも行きたいんで…早めに沈めや!クソモブども!!」


昔から弟から「姉貴は感情昂ると口悪くなるよな」と言われ、その度にお前が言うなと拳骨を落としていたが、あながち弟のコメントも間違いではないと今自覚した。十分に出た汗で爆発も威力がある。サポートアイテムがないので反動が直にきてしまうが、そんなひどい状況にはならないだろう。周りからもヒーローが敵を拘束していく姿を見ながら、また一人、近くにいた敵の足を払って転ばせ気絶する程度の爆発を与える。


「お前らは大人しく眠ってろ、タコが!」
「ナマエ少女…君、二重人格とか言われない?」


最後の一人を私が沈め立ち上がると、どこかおびえた顔でオールマイトが聞いてきた。それに私はいつも見せている表向きの笑顔を向けて応えた。


「そんなことないですよ」




勝己の姉は怒ると怖い
180916 執筆


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