複数ジャンル短編 | ナノ
緑谷出久には姉がいる。少し歳の離れた社会人の姉が。そして、緑谷出久には爆豪勝己という幼馴染がいる。そしてその幼馴染という枠には、自然と姉のナマエも当てはまってくる。


「おーい、かっちゃーん」
「アア゛!?」
「うん、相変わらず凶悪な顔面してるね」
「んだとコラ!死ね!」


ガルルルとまるでしつけのなっていない犬のように睨み吠える弟と同じ歳の幼馴染の姿。なんだかそれがとても懐かしく感じて、うんうんと頷きながら私は色素が薄い爆発した頭を撫でた。勿論、その手はすぐさま弾かれてしまう。乱暴なのも相変わらずのようだ。


「用件がないならさっさと去ねや!」
「いなくなれの言い方が随分と古いね、今日の授業で古文やったの?」
「してねェわ!いいから用件言えや!!」


生徒がまだ沢山通る校門の前だというのに幼馴染の俺様節は揺るがない。吠える幼馴染の後ろで弟が青い顔をしているけれど、大丈夫だというように軽く手を振っておいた。「早くしろ!」と吠え続ける幼馴染に「元気だねぇ」と応えながら鞄に手を入れて目的の袋を取り出す。
弟と同じように雄英に入学を果たした幼馴染。別に兄弟でもなんでもないので、祝いの品なんて用意するほどのものではないかもしれないが、そこは私の気持ちの問題だ。


「遅くなったけど、雄英入学おめでとう、かっちゃん」
「……。」


中の見えない袋に入れたらなにか言われそうな気もしたので中身が見える透明袋にシンプルな祝いのリボン。その中に納まっているのは給水力がいいというスポーツタオル。弟のように何か文具でもいいとは思ったけれど、努力家の彼ならばこっちの方がいいと思って選んだ。
無言でタオルを見つめる彼にもしや嫌だったのかと首をかしげると、少し荒い手つきで私の手から袋が持っていかれた。顔はまだ渋いままだったけれど、貰ってくれたという事は嫌ではなかったようだ。最悪その場で爆発される覚悟だったので、貰ってもらえただけで充分である。


「応援してるから、頑張ってね」
「言われなくても頑張るわ。クソが」
「あ、でもその言葉遣いは直したほうがいいよ?子供に受けないよ?」
「お前は俺の母親か!」


ボンッと良い音がして私の個性で強制的に上に引っ張られた手から爆発が起きる。本当は目の前で威嚇のように爆発させたかったんだろうけれど、それは私には通じない。長年の付き合いで彼の性格や行動は熟知しているからこれくらいは朝飯前だ。


「爆破の脅しは私には効かないの、忘れちゃダメだよ。かっちゃん」
「……チッ」


大きな舌打ちを残して袋を持ったままその場から歩き出すかっちゃん。どうやら彼の中で私との会話はこれで終わったらしい。少しイライラした様子で去っていく彼の後を赤い髪の男子と黄色い髪の男子が追いかけていく。あのかっちゃんにもお友達ができたんだと、ぎゃんぎゃん言いつつも両隣の彼らの歩調に合わせて歩くかっちゃんの姿に自然と表情が緩んだ。


「姉さん!大丈夫?」
「平気、かっちゃんのあれはいつもの事だから」


はわわと慌てながら走り寄ってきてくれた弟の頭をわしゃわしゃと撫でる。「そうだけど、万が一のことだってあるし…」と不安げに言う弟に次から気を付けるよと言えば、瞳に浮かんでいた不安の色は少しだけ薄らいだ。


「おい!ナマエ!」


表情をころころ変える可愛い弟の頭を撫で繰り回していると、少し遠くから聞こえてきた大声。何かと視線を向ければ、離れた場所から私を見るかっちゃんがいた。


「ありがとな!」


その御礼がなんの御礼なのか。考えなくたってすぐにわかる。主語もつけずに言ってくるのは彼らしいといったところか。


「どういたしまして!」


大きく叫ばれた声に返すように私も大きな声で返せば、満足したのかかっちゃんはまた背を向けて歩き出した。その後ろを信じられないものを見るような表情のままついていく二人の男子。


「爆豪、お前も御礼言えるんだな」
「意外だぜ」
「んだとコラ!礼くらい言えるわボケ!!」


三人が歩いていった方から何やら楽し気な会話もおまけで聞こえてきてつい笑いが零れる。そんな私の隣で弟が「かっちゃんが…御礼を言った…!?」と信じられないような表情で震えていたけれど気にしないでおくことにした。




爆豪は出久の姉に少し弱い
180823 執筆


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