複数ジャンル短編 | ナノ
朝、田中くんから今日は昼寝日和だと教えてもらった。ぽかぽかとした暖かな日差しを受ける授業はとてもゆっくりと進んで行って、自然と生徒の眠気を誘う。一人、また一人と先生に見つからないようこっそりと寝息をたてる周りの生徒。その中に田中くんも勿論いて、私の後ろですやすやと気持ちよさそうな寝息をかいていた。
私も日差しの暖かさに何度かうとうとしてしまったけれど、なんとか堪えつつ授業を受け切り、やってきたのは昼休み。
ぐう、と不満を訴えてくるお腹に素直に従って、持ってきたお弁当を取り出す。さっきまで静かだった教室は、授業終了の鐘が鳴った瞬間騒がしさを取り戻していた。
後ろで眠っていた田中くんも、隣の太田くんと一緒に昼食を取りにいってしまった。私の周りの人も、思い思いの友達と一緒に昼食を取りに席をたってしまっている。賑やかな教室内の窓際にぽつんと取り残されてしまった私は、仕方ないと思い直してお弁当を広げた。いつも一緒にご飯を食べている白石さんは、今日はあいにく他の友達と購買に行ってしまっている。
まぁ、偶にはこんなお昼もいいだろうと、ご飯を食べながら窓の外を見た。日差しがいい事もあって、外でご飯を食べている人もいた。その中に見慣れた姿を見つけて、少しだけ窓に身を寄せる。
校庭にある木に寄りかかって仲良くご飯を食べている二人。田中くんと太田くんだ。相変わらず仲がいいなぁ、と思いながらまた一口ご飯を口に運んで咀嚼していると、不意に太田くんに視線を向けていた田中くんと目があった。


「あ…」


じっとこちらを見つめてくる黒い瞳。視線を逸らそうとも考えたけれど、なぜかできなくて私もじっと田中くんを見ていた。そんな状態がどれくらい続いたんだろう。一点を見つめたまま動かなくなってしまった田中くんを不思議に思ったらしい太田くんの声掛けで、田中くんの視線が私から太田くんへと戻った。
「誰かいたのか?」というような問いかけをしているらしい太田くんに田中くんは一言二言応えて、購買で買ったらしいご飯を口に運ぶ。太田くんも、それ以上聞くのは諦めたらしく、同じように食事を再開した。
短い会話をしながらご飯を食べる二人から視線を逸らし、私も止まっていた食事を再開する。だけど、思考はさっきの出来事でいっぱいになっていて、食べているご飯の味はよくわからないものになっていた。




後ろの席の田中くん2
160529 執筆


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