この世は全て無駄でできている。それは大げさかもしれないが過言でもないだろう。
△ ▼ △
いつも通る道…それを少しずれた小道に入ると、あの刺青少年に初めて会った土手にでた。静かに流れていく川をいつまでも見つめている。
何かをしたいわけじゃない。
何かをしにきたわけでもない。
何もすることもなく僕は長い間そこに座っていた。 そのうち日が暮れてきて影が僕の横に長々と伸びる。僕はその影にそっと触れる。
何かを期待しているわけでもなく、だだ、なんとなく自分の影に触れていた。
「おにーさん何やってるの〜?」
いきなり隣から聞こえた声。 言い方からしてあの殺し名一位の一族かと思ったが、いたのは小さな少女だった。
最近いろんなことが立て続けに起こっているから少し疲れているんだ、多分。
少女は大きな瞳をクリクリ動かして僕を見つめた。
一体何歳なのだろう。
どうしてこんなところにいるんだろう。
第一に何故僕に話しかけてきたのだろう。
こんな疑問が一気に頭におしよせる。
「今のところ、17歳で。散歩の途中だったの〜。んで、おにーさんに話しかけたのは…」
少女は平然と僕が思った疑問に答えていく。これは世で言う読心術というものか。途端にはしる肩の激痛。 見てみると肩が10cmぱっくりと切られている。
あぁ、お気に入りだったのにな…この服。
少女は切られた服をじっと見つめる僕を不思議そうな顔で見つめていた。
「やっぱ、おにーさん変わってるねぇ〜。普通なら泣き叫んだりするのにそんなこと全くしないし〜」
「そうかな?」
それは、これより危険なことを体験したからだろう。
「クルルル…うん。なんか、こんなこと日常茶飯事だって顔してる」
少女は器用に喉を鳴らして笑う。
笑い方が猫みたいだ。
「でも、猫じゃないよ〜」
「あぁ、読心術が使えるんだっけ。」
「おぅ!おにーさんもうわかっちゃったかぁ〜。鋭いな〜」
「まぁ、観察力はあるから…」
「ふーん…やっぱおにーさん面白いね〜!」
そう言って少女はピョンッと僕に近づいてくる。 一応身構えたけど「あ、もう攻撃しないからあんしんして〜」と言われたので自然体で少女を見つめた。 少女は僕にたどり着くと、包帯などを取り出す。
「?なにしてるの?」
「傷、血止めなきゃ」
「あ…」
忘れてた…。
「クルルル!やっぱおにーさん面白いねぇ」
少女はテキパキと処置をする。やり方からして相当手慣れている。
よく怪我をするのだろうか?
「まぁね。あと駄目な兄貴が一人いるんだ」
また、読心術か。
「どんなお兄さんなの?」
まさか、顔に刺青…なんかはないよな。
「あれ、よくわかったね〜。もしかしておにーさん兄貴に殺されそうになったことあるのかなぁ〜?」
まじだった。
「さてと。これでおっけー!」
そう言って傷口を叩かれる。痛い…。
少女はピョンと僕から離れ、ニパッと笑った。
「バイバイおにーさん!あと傷ごめんね。まさかかするだけとは思わなくて」
と言うことはあれか、本当は僕の息の根を一発で止める気だったと…。
少女は肯定のかわりにペロリと舌を出した。 流石人間失格の妹。
「じゃっ!」と言って少女は歩き出す。それを止めたのは…僕だった。
「あの、君の名前…」
「ん?。ミョウジナマエ、零崎名は零崎○○。またな、欠陥製品!」
最後に少女は「クルルル」と笑って消えた。
「ミョウジ、ナマエ…か。」
呟いてそっと傷を触る。
最後に残された言葉「またな」。「さよなら」でも「それじゃ」もない、「またな」。 また会おう、そう言ったと解釈してもいいのだろうか。
「なんて、戯言か…」
そう言って僕も歩き出す。 小道を抜けていつものアパートへ。
△ ▼ △
この世の中は無駄だらけだ。 だから期待しても無駄だ…けど、時には期待してみてもいいのかもしれない。
また、彼女に出会えることを。
「また」(今日ね、面白いおにーさんに会ったんだ。んで、殺さなかった!)
(へぇ、お前が殺してこないなんて珍しいな。どんな奴?)
(えーと…欠陥製品!)
(ブフッ!!)初いーちゃん夢(お蔵入りしていたもの←)。
091117 修正
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