ネタ吐出し場 | ナノ



鬼灯 審神者が地獄へ

「主!!」

蛍丸のあせった声が後ろから聞こえる。目の前にはぎらぎらと瞳を炎のように光らせた敵の太刀がいた。あれ、どうしてこんなことになっているんだろう。そんな疑問が頭の中をぐるぐるとまわる。
不意にのどから熱い何かがこみあげてきて、耐え切れずに口を開けばごぽりと赤い液体が唇を伝った。

「げほっ…」

ずるりと体の中から何かが抜けていく感覚。それが抜けると同時に体が芯を失ったようにバランスを崩して地面へと倒れる。まるで燃やされているように胸が熱く、口から血が流れ続ける、朦朧とする意識の中視線を動かせば、赤く塗れる刃が見える。あぁ、きっとこれが私の体に入っていたんだ。自然とそう判断した。

「主!主!!」

泣きそうな表情で私の体を抱き起す蛍丸に大丈夫だと教えるために笑おうとするけれど、うまく表情が作れない。その頬を撫でてあげたいけれど腕は鉛のように重くて動かせない。ごめんね、と紡いだ言葉は音になってくれただろうか。
必死に私の事を呼ぶ蛍丸の声もだんだんと遠のいていき、私の思考はブラックアウトした。




▼△▼




ぱちりと目を開けば目の前に広がるのは見慣れない天井だった。なるほど、ここが天国か…とぼんやり考え体を起こす。てっきり痛みや傷が残っているかと思ったが体に走る激痛などはなかった。自分の体を見下ろせば、着物はいつも着ていた着物のままだった。おなかの部分が赤いのはおそらく血だろう。つまり、この部分を刺されて私は死んだということだ。

「ねえねえ」

ふと横から明るい声がかけられる。つられるように顔を横に向ければそこには一匹の白い犬がいた。ふりふりと振られる白い尻尾、ふわふわの体。どこか興味津々で私を見つめる犬は前足でとんとんと私の手を叩く。

「お姉さんどこからきたの?亡者?」
「え…えっと…」

亡者?と聞きなれない単語に首をかしげつつどう答えればいいか考える。と、また別の足音が近くで聞こえた。

「シロさん、そのくらいにしてあげてください。困っているでしょう」
「えー…」

犬はシロという名前らしい。とても安易な名前だ。「ちぇー」と残念そうに言いながら私から離れていった犬の姿を追うと、着物を着た一人の男性が立っていた。
けれど、彼には決して普通の人間にはないであろうものがあった。それは額から生えている角。まるで鬼のそれのような一本の角。あ、ここ天国じゃねえや。そんな結論に至るまでそう時間はかからなかった。


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