刀剣 復活→刀剣のトリップ主
9代目の命令で日本に来た|ヴァリアー幹部の一人
それはいつもの光景を見ている時だった。日常が一変して私たちの周りにはマフィアだとかボンゴレだとか戦いだとかそんな単語が飛び交う世界になった。そんな世界でリング争奪戦をし、未来へ飛び、継承の儀を行った。すべてが落ち着いた今の世界。ボンゴレから派遣された私もそろそろ潮時で新しい任務につくころかなと目の前で優雅にエスプレッソを飲む赤ん坊を見ながら考える。
「ねぇ、リボーン」
「なんだ?」
「そろそろ私の役目終わりじゃない?」
私がボンゴレ9代目からもらった任務は一つ。ボンゴレ10代目を鍛え上げること。今私のうしろで小さな子供たちと戯れる彼は初めて会った頃と比べれば桁違いに強くなった。ファミリーだって揃ったし、ボックスだって使える。ボンゴレに伝わる超直感だってそれなりに使いこなせるようになっている。そうなると私の役目はもう終わったも同然だろう。
リボーンはそんな私を黒く大きな瞳で見つめ、そうだな、と一言つぶやいた。
「俺としてはこのままいてくれてもいいんだぞ?」
「あはは、それはある意味嬉しい申し出なんだけどね」
やはり戦地で過ごしてきたせいだろうか。最近それを無性に求めてしまうのだ。確かに、彼が通っている中学を牛耳る学ランの青年との戦いも確かに楽しい。けれど、それだけでは満足できないのだ。命と命のぶつかり合い。自分の足元に死線が見え隠れするあの間隔。全身に浴びる血。肉をえぐり、切り裂く感触。それを欲してしまう。
「私にとって、ここは暖かなぬるま湯みたいな場所なんだよ。確かに心地はいいよ。けど、ずっと浸かっているのは流石に飽きちゃうんだよね」
腰に付けている刀を軽く触り、瞳を細める。リボーンはそんな私を見てため息を一つ。
「わかった。俺が9代目に掛け合ってやる」
「ありがとう、リボーン」
持つべきものはいい知り合いだ。またあの場所に戻れるとウキウキしていると後ろからランボの泣き声が聞こえてきた。どうやら、イーピンと喧嘩をしたらしい。
「うぅー、が、ま、ん。できなーい!!」
そう言うがもふもふの羊の毛のような髪から取り出すのは大きなバズーカ。当たると10年後の自分と5分間だけ入れ替わるその兵器は彼のファミリーが作り上げた物だった。あぁ、またいつもの事かと思い見ていると小さな風が私の髪を揺らす。
「うるせえ」
「ぐぴゃっ」
ごすっといい音とともにランボの額に当たるスプーン。それは先程までリボーンが使っていたものだった。これもいつもの光景だ。そしていつものままならランボの手から零れ落ちたバズーカがランボにあたり、10年後の彼が現れるという流れ。しかし、今日は少しだけ流れが違ったらしい。小さく弧を描いて飛んできたバズーカは私の方へと向かってきていたのだ。
「あ、危ない!」
「え…」
10代目の叫び声とドカンという音とともに私にバズーカが当たるのは同時だった。大きな音と衝撃。煙で真っ白になった視界。慌てて煙をはらえば見えてきたのは所々に木々が見える荒野だった。
「私はこんなとこでなにやってたんだ…」
手違いなどがなければ私がいるのは10年後の世界。そして元の世界には今10年後の私が現れているはずだ。今までも何度か誤爆して10年後に来ていたがこんな光景を見るのは初めての事だった。とりあえずはファミリーの誰かを探そうと足を踏み出した、その時だった。
ぞわり、と背筋が寒くなる。それは戦場で感じる殺気と同じもの。ばっと振り返ればいつからそこにいたのだろう、人とも化け物ともいえないモノがいた。全部骨だけのモノもいれば、人の体で一部骨だけのモノもいる。すべてのモノに置いて一緒なのはそれぞれの長さの刀を持っていること。
「ガァアアアアアア!!」
雄叫びとも取れる声を上げそれらは私に向かってくる。周りを見ても何もいないところを見ると彼らの標的は私のようだ。少なくとも話し合いができそうな相手ではないので腰の刀を抜く。指にしたリングへと視線を向ければともる炎。死ぬ気の炎は使えるようだ。
「動くの面倒だから5分間ぼんやり待ってようかと思ってたんだけど、なっ」
横に一線。炎を纏った刀は相手をいとも簡単に真っ二つにする。これならいけると思い残りにも視線を向ける。久々に感じる感覚に、私の口角は自然と上がっていた。
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