お互いの、ガラス瓶に詰まったものは

感情を出すのが苦手だった。
お面のように表情が変化しないわけじゃない。
ゲームなどの機械を操作するみたいにコントロールすることが出来なかった。
自分の存在はバグなんじゃないかと考えたこともあった。
でもそんなことはなかったらしい。
彼と会って自分は豹変したとおもう。

彼は明るくいつも輪の中心にいて才色兼備で文武両道。
自分から見たらこの世に光臨した神なんじゃないかという存在であった。
こんな人間実在していいのか、と思っていた。
彼のことを憧れ羨ましく思い、それと同じぐらい憎み妬んでいた。

そんな彼が話しかけてきたのだ。
最初は嬉しかったが情けをかけられているのではという卑しい思いが強く無視を続けた。
続けたというほどなのだから其れは其れは何回も。
彼は私が無視した分だけ話しかけてくれた。
それと余計に一回話しかけてくれた。
私が始めて言葉を返した時だ。
彼はとても嬉しそうな顔で私のほうを見てありがとうといった。
そのときとても恥ずかしい気持ちになったのを憶えている。

それから彼はずっと私といてくれるようになった。
今思うと私がずっと彼についていたのかもしれない。
一緒にいたのだから仲良くなった。
前の日よりも、前の前の日よりも。
彼は私に色々教えてくれた。
勉強が出来なければ勉強を
運動が出来なければ運動を
化粧が苦手ならば化粧を教えてくれた。
全部仲良くならなければ分からなかっただろう。
仲良くならなければ彼のことなんて一つも。
彼は甘いものがすきなんだって。

私は嫌いだったけど今は好き。甘いもの大好き。
今はいつもみんなの輪の中にいる。
最近はとても調子がよく勉強も、運動も出来るの。
彼に教えてもらったことをそのままやったら何でもできるようになった。
私は彼が大好きになった。
彼のことを真似すれば何でもできる。

そんな彼は今何処にいるかって?
彼は、いない。いることはいる、けどいない。
姿形は彼そのもの。
勉強や運動なんかの出来も変わらない。
でも
彼は前のようにみんなに囲まれていない。
彼は昔のように笑ったり、ころころ表情を変えない。
彼は以前のように甘いものが好きじゃない。

私が真似を始めてから。

まるで私と彼が入れ替わったみたい。


それって、最高!

/お互いの、ガラス瓶に詰まったものは

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